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ウクライナ戦争で露わになったEU内の格差問題 ヨーロッパの農家はなぜ抗議活動を行うのか

東洋経済オンライン / 2024年2月16日 8時0分

今回の抗議運動はドイツから始まったが、2023年の干ばつ、同年末からの洪水などで大きな打撃を受けた農家が、政府への抗議の機会をうかがっていたことだけは確かである。とりわけ、ドイツではディーゼルエンジンの燃料、重油への補助金の減額に爆発したのである。

ドイツ経済は停滞している。ロシアと深く結びついていた経済関係を経済制裁で断ったことでエネルギー資源が枯渇し、産業全体の歯車が狂ったとも言える。ドイツのウクライナ問題の立ち位置はその意味では微妙であった。ロシアと進めたガスパイプラインは、諸刃の剣であったからだ。

それはなぜか。それはこれが、ロシアとの関係を強化することでドイツの産業発展を拡大するチャンスになったことである。

しかし、それがかえってアメリカの反感と不信を買い、アメリカがポーランド、ウクライナへの接近を促したことによって、ドイツはガスパイプラインを手放し、期待された産業発展すらも手放すことになったからだ。ウクライナ戦争による経済制裁は、ロシア経済以上にドイツ経済を悪化させているのである。

一方のフランスではいくつかの複合的問題で農民の抗議が起こったのだが、根本的原因はウクライナ問題にあることでは共通している。

複合的である理由は、環境税の支払いがそのきっかけである点だ。環境に悪影響を与える農薬の使用に対してその生産物に課税するというものだが、これによってフランスの農家は当然価格の点で不利となる。

「ウクライナ戦争」という共通点

しかも、ウクライナ戦争によるインフレも手伝い農産物価格が上昇する中で、EU以外の国と自由貿易を結び、そこから安い生産物が来るという政府の政策の追い打ちも手伝って、国内の農産物は価格競争で太刀打ちできなくなってしまったのである。

フランスの場合、相手はウクライナやニュージーランドといったEU外だけではない。EUのスペインとの間でも、こうした環境基準をめぐって対立している。環境基準が違うスペイン産の農産物がフランスを直撃しているという問題である。

だから農民はスペインとの国境の封鎖も行った。エコロジー規制の低い国から農産物が入ってくれば、エコロジー規制をする意味がなくなってしまう。政府のいうことをまともに聞けばろくなことはないというわけだ。

EU内の商品にはさまざまなEU独自の規制があるが、完全に統一されているわけではない。大学教育もそうで、教育水準の低い国、高い国、卒業の厳しい国と厳しくない国がある。

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