ウクライナ戦争で露わになったEU内の格差問題 ヨーロッパの農家はなぜ抗議活動を行うのか
東洋経済オンライン / 2024年2月16日 8時0分
さらにはジョージア、アルメニアへとどんどん拡大する可能性もある。当然ながらEUの軍事面での組織はNATOであり、これらの諸国はNATOに入るだろう。ロシアのプーチンが恐れるのは当然ともいえる。
こうした拡大を促進しているのは、保守派の民主党や共和党だけではない。社会民主党や社会党といった革新政権もしかりである。それはなぜか。そこにある種のインターナショナリズムが背後にあるからである。
人権と民主主義をそれらの地域に広めるという大義名分がある。しかし、それは資本の利益にも利するものであり、革新政権は保守派と利益を折半した。この点で保守も革新も一致してグローバリゼーション促進派となった。
そして一方で、安価な労働力である移民の受け入れについても、保守政権も革新政権も積極的である。こうしてEUの拡大と国内における移民労働者の受け入れによって、フランスなどの国民は、空洞化と失業の洗礼を受けることになる。
極左・極右勢力が台頭した理由
それに怒った国民の票をあっという間に獲得し、躍進していったのが、極左政権と極右政権である。さらにウクライナ戦争が起き、インフレと不景気が追い打ちをかけ、悲観した国民は極右や極左に活路を見いだそうとしている。
革新政権と保守政権がEU拡大を謀った結果がウクライナ戦争なのだが、国民は自由と民主主義を守る戦争というお題目の中で、彼らと結びついた大手メディアの情報に動かされ、正確な情報を閉ざされてきた。
しかし、現在の悲惨な状況の中で、ことの原因がどこにあるのかを次第に知り始めてきていることも確かだ。だから国民の多くが停戦とロシアとの関係の改善を求め始めているのである。
このまま保守と革新の政権エリートが、国民を犠牲にした破滅的世界戦争へと進むのか、それとも平和に戻るのか、それは、彼らがこの農民の小さなバリケードから、ことの本質をしっかりと理解できるかどうかにかかっているともいえる。
的場 昭弘:哲学者、経済学者
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