日経平均が最高値の1989年はどんな年だったのか 「喪が明けた感覚」など2024年と「3つの共通点」
東洋経済オンライン / 2024年2月17日 8時30分
問題はこの株価の変化を、当時の報道機関が説明できなかったことである。「マーケットが陛下の死を先回りして動いている」とは、畏れ多くてどこも書けなかった。当時、株の専門紙の記者をしていた大学の後輩が、「仕方がないから『情報関連で買われている』と書いています」と言って笑っていたことを懐かしく思い出す。
日本という国は昔からそんなふうなのだ。「Xデー」の到来とともに、それまでのもやもやした雰囲気はスーッとなくなった。そして新聞の株式欄は、「改元需要」という記事を載せたが、紙パルプと印刷株はそこが高値となり、むしろ売られた。相場格言でいう「知ったら終い」というやつである。当時、投資の初心者であった筆者は、結局「見てるだけ」だったけれども、何か重要なことを教わったと感じたものである。
1989年はそんなふうに始まった。この年の4月1日から導入されたのが消費税である。当時は3%だったから、金額的にはそれほどでもなかったが、皆が怒ったのは財布の中で急増した1円玉の煩雑さである。数人でランチに行った際の割り勘など、面倒で仕方がない。ちなみにこのときは年商3000万円までの事業主は、消費税は免税であった。インボイス制の導入は、実に34年後のこととなる。
消費税への不満は、折からのリクルート事件によって増幅された。これもまた一種のバブルによる犯罪であって、当時は新興企業だったリクルート社が、値上がり確実な未公開株を政官界にバラまいていたことが世間全体の怒りを呼んだ。ひとつには1987年のNTT株第1次放出で、あっちこっちに「株成金」がいたことも、不快感を加速したのであろう。
7月の参議院選挙で自民党は大敗した。総理大臣は竹下登から宇野宗佑へ、そして海部俊樹へと目まぐるしく入れ替わった。思うに政治が安定していなくても、株価が上がることの妨げにはならない。このことは令和バブルの現在もまったく同じであるように見える。
この年の国際情勢は激動の連続だった。6月4日には天安門事件が発生。民主化を求める人々を人民解放軍が容赦なく弾圧する様子に世界は戦慄した。翌月にパリのアルシュで行われたG7サミットでは、欧米諸国が中国を強く非難する中で日本はむしろ庇う側であった。今と違って中国経済はまだまだ小さく、世界経済への影響は限定的であった。
この年最大の事件は、ベルリンの壁の崩壊である。11月9日、東西ドイツを分け隔てていた壁が、ベルリン市民の手によってあっけなく撤去されたのだ。東欧諸国は雪崩を打ったように民主化し、ルーマニアのチャウシェスク政権が年末に倒れるまでは一気呵成であった。「冷戦が終わる!」「平和の配当がやってくる!」という高揚感の中で、日経平均は12月29日に最高値をつけたのである。
平成元年と令和6年の共通点とは何か?
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