四重苦のロシア、「宇宙計画」で中国と協力拡大へ 中露の情勢不安定化が宇宙における冷戦へ結びつく
東洋経済オンライン / 2024年2月19日 15時0分
ウクライナ侵攻による制裁や体制の腐敗、高齢化、肥大化に苦しむロシア。一方、宇宙ステーション「天宮」、月面探査車「玉兎2号」などで宇宙開発をリードする中国。本稿は元自衛隊空将の長島純氏の著作『新・宇宙戦争』より一部抜粋・再構成のうえ、ロシアと中国の宇宙戦略を解説します。
ロシア──最初に人類を宇宙に送った国
本稿では、ロシアと中国の宇宙戦略について述べたいと思いますが、まず歴史的経緯を振り返りましょう。
ロシアの前身であるソビエト連邦は、1957年のスプートニク1号によって、最初に人類を宇宙に送りました。旧ソ連崩壊後は、宇宙ステーションの運営、ロケット打ち上げなどの面で、西側諸国とロシアは良好な協力関係を築きながら、民生、軍事、科学技術のあらゆる面で宇宙の主要プレイヤーであり続けました。
しかし、2014年のクリミア併合以降、西側諸国との関係が急激に悪化し、2022年のウクライナ侵攻によって、ロシアの覇権主義的な領土拡張の野望と既存の国際秩序への挑戦に対する警戒が一気に高まり、その宇宙計画も大きな影響を受けることになりました。
歴史的に、ロシアの宇宙計画は軍事利用を中心に進展してきており、関連する技術の多くは、軍事目的のものからスピン・オフ(民事転用)されていったものです。例えば、冷戦期の宇宙ステーションは宇宙兵器のさきがけとして期待され、国際宇宙ステーション(ISS)の打ち上げに使用されているソユーズ・ロケットは、核開発のために製造された大陸間弾道ミサイル(ICBM)用のR−7ロケットから派生されたものです。
ウクライナ侵攻を契機として、ロシアは西側の経済制裁やエネルギー価格の下落に直面し、関係予算がより縮小する中で、軍事的な能力の維持や向上に資源投資を優先しなければならないため、宇宙探査や科学的な宇宙活動の進歩、さらに商業や産業面からの宇宙への取り組みに後れが生じるのは必至です。
それはロシアが西側からの制裁、体制の腐敗、高齢化、肥大化という四重苦に苦しむ中、同国の宇宙計画が大きな岐路に立つことを意味しています。
中国──軍民融合による技術革新
中国の宇宙開発は、1956年、毛沢東国家主席が掲げたスローガン「両弾一星」の下、国家的なプロジェクトとして始まりました。「両弾一星」とは、原子力爆弾(後に水素爆弾)、その運搬手段としてのロケット(「両弾」)と「一星」(人工衛星)を指します。そして1970年には、中国は、世界で人工衛星を軌道に乗せた5番目の国家となるまでに成長しました。
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