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四重苦のロシア、「宇宙計画」で中国と協力拡大へ 中露の情勢不安定化が宇宙における冷戦へ結びつく

東洋経済オンライン / 2024年2月19日 15時0分

中国の宇宙計画の特徴は、対外的には国際的威信の誇示、国内的には愛国心の高揚という点にありますが、その背景には、自国の安全保障環境の変化への適合と現代の戦争の進化への対応を客観的に見据えた現状認識があると思われます。

歴史的に中国人民解放軍(PLA)の作戦構想は、大規模な兵士の動員と総力戦の準備を中心とする陸軍中心的な用兵思想に基づいていました。しかし米国が主導する、ネットワーク化による統合作戦を特徴とする「砂漠の嵐(Operation Desert Storm)」(1991年)や、空軍力が決定的な役割を果たした「同盟の力(Operation Allied Force)」(1999年)を目の当たりにして、党指導部と人民解放軍幹部が受けた衝撃は大きかったと言われています。

その教訓を受けて中国は、従来の戦い方からの脱却を図り、陸海空の統合作戦に加えて、宇宙、サイバー、電磁波領域を組み合わせて、広大な戦闘領域で戦うことができる近代的な軍隊への転換を図ることになりました。

その過程で、近代的な軍事作戦を行なうために、宇宙を新たな「戦略的高地」と位置づけ、宇宙における軍事的優勢を獲得することが最重要課題の一つとなったのでした。

2015年に公表された国防白書「中国の軍事戦略」では、「天空一体」「攻防兼備」の空軍建設が目標として掲げられ、作戦戦術面でも大きな変化が起きています。

PLAは、空軍力と衛星システムの統合一体化を推進して、人工衛星による支援で軍事作戦の適用範囲を遠方に拡大すること、そして、機動力を用いたダイナミックな戦い方を目指しています。同年12月には、中央軍事委員会の直轄部隊として戦略支援部隊(SSF)が新編され、宇宙における戦闘、衛星の打ち上げ、人工衛星の取得と運用の管理など、PLAを新たな領域から支援する態勢が整備されつつあります。

このように、PLAがサイバー空間だけでなく、宇宙空間における情報の優勢を確保し、宇宙空間を含む統合作戦を実施する準備が着々と進んでいきます。

中国が高い技術力を必要とする宇宙の軍事利用を加速できる背景には、国家規模で推進する「軍民融合(MCF)」戦略の存在が認められます。MCFは、民間と軍事の技術分野の境界線を意図的に曖昧なものとして、中国の民生部門のイノベーションとリソースを、PLAの要請に応じて利用できるようにすることを目的としています。

このMCFの流れの中で、中国は経済大国と軍事大国を同時に実現することを目指して、商業宇宙分野でも積極的な取り組みを始めています。

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