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四重苦のロシア、「宇宙計画」で中国と協力拡大へ 中露の情勢不安定化が宇宙における冷戦へ結びつく

東洋経済オンライン / 2024年2月19日 15時0分

2014年、中国政府は商業打ち上げ会社の設立を発表し、さらに技術的な制限の撤廃を解除して、宇宙の商業市場への投資を開始しています。ここから、宇宙産業の振興のみならず、宇宙関連部品のサプライチェーンの面でも、中国の経済の主導性を確保しつつ、国際的な競争力を増大させようという、中国政府の深謀遠慮がうかがわれます。

中国の宇宙ステーションにロシア人は入らない?

現在も、中国とロシアは世界屈指の宇宙大国ですが、これまでの各々の発展の経緯を踏まえれば、将来、宇宙という領域では両国の関係が変わっていく可能性があります。

中国は、初期の民生・商用宇宙計画では、ロシアから中国人宇宙飛行士の訓練や衛星ロケットの打ち上げなどの技術的支援を必要としましたが、国家一丸となって独力での研究開発を続けた結果、宇宙ステーションの建設(2022年)、月や火星の探査(2020年に月探査機嫦娥5号が月面の岩石や土壌を持ち帰り、月面探査車「玉兎2号」を稼働中です。

2020~21年、火星探査機天問1号の打ち上げ・着陸に成功)、測位衛星システム(GPS)、リモートセンシング、大積載量ロケットの研究、開発、装備化を実現しロシアを圧倒するまでに成長しました。このような中国の宇宙空間での存在感の高まりを見て、西側諸国の宇宙関係者の多くは、振り返れば中国との宇宙協力に対して大きな期待を抱いたことでしょう。

当時公開された、宇宙を舞台にしたハリウッド映画『ゼロ・グラビティ』(2013年)や『オデッセイ』(2015年)では、ピンチに陥ったアメリカ人宇宙飛行士を中国が助けるというストーリーが好意的に受け止められたのは、その証拠です。

しかし中国が、国内の少数民族への対応を契機に、人権や自由を巡って西側諸国との軋轢を表面化させ、2014年のクリミア併合を契機として急速にロシアと西側諸国との関係が悪化する中で、皮肉にも中露間の宇宙の知財協力が進むことになっています。

特にGPSシステムに関して、ロシアのGLONASと中国の北斗システムとの補完性を高める動きは、民生分野の協力のみならず、軍事的な偵察や高精度兵器の誘導における相互支援につながっていく可能性は高いです。

中国とロシアのこれから

そして、2022年2月のウクライナ侵攻直前の首脳会談において確認された「制限のない」パートナーシップをトリガーとして、中露両国の宇宙協力が、月面や深宇宙の探査、衛星システムの協力、宇宙ゴミ(スペースデブリ)の調査などへと拡大していくことも間違いないはずです。

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