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キューバ「オーガニック大国」になった意外な経緯 大国に振り回される中、たどりついた農業

東洋経済オンライン / 2024年2月19日 16時0分

配給というシステムがまだ続いていることに驚きつつ、「これだけで足りるの?」と尋ねると、「量はギリギリ、生野菜はないけれど、贅沢しなければ生きることはできる」と言う。

現実には、最低限の食料を配給で得つつ、それだけではあまりに味気ないので、食卓のバラエティを求めて市場でも買う。社会主義と市場経済を合体させたベーシックインカム的な仕組みが、この国のユニークな食料システムだ。

さて、このフリホーレス・ネグロス、ほんとうに毎日食卓に上る。別の日も、別の家庭でも、連日フリホーレス・ネグロス。キューバの国民食とも言われる。あまりによく食べるものだから、生産の様子から知りたくなって、農家の元を訪れた。

迎えてくれたのは、日焼け顔に麦わら帽子が似合う、農夫のティティ。3人の子どものパパでもある。畑に連れて行ってもらった。と言ってもきれいに整備された区画や道があるわけではなく、草をかき分け、時に足を傷つけながら平原を歩いていく。靴を履きなさいと言われたのに、振り切ってサンダルで来たのを後悔した。

化学肥料なしでも持続的な農業が可能に

視界が開けたと思ったら、ずっと向こうまで畑が続いている。彼の畑は、「ここからあそこのヤシの木まで」だ。植えられているのは黒インゲン豆。その合間に、忘れもののようにとうもろこしの長い葉がぴょんぴょんと頭を見せている。輪作でこの前に植えられていたものが、こぼれて芽を出し育ったのだ。

この畑では、とうもろこし・黒インゲン豆・サツマイモを輪作している。あちらの畑は、稲と飼料。異なる作物をローテーションすることで、土壌中の養分のバランスが整い、化学肥料なしでも持続的な農業ができるらしい。

別の畑では、牛が鋤(すき)をひいて畑を耕している。草が茂っているけれど、農薬は使わない。「こっちにおいで」と言って、ティティは土づくりの様子も見せてくれた。収穫した後のとうもろこしの茎や葉を一ヵ所に集め、堆肥を作っている。これが畑の栄養となる。

つまり、有機肥料を使い、無農薬無化学肥料のオーガニック農業だ。その上トラクターも使わないのだから、自然農法に近くすらある。何がすごいって、これが「一部のこだわり農家の話」ではなく、農業のスタンダードとして広く行われているのだ。その仕組みやノウハウを知りたくて、ヨーロッパから視察に来る人もしばしばいるのだという。

食料確保が課題の国で、オーガニック農業とは、いったいどういうことだろうか。そんな余裕が、あるのだろうか。キューバ式オーガニック農業の成り立ちを紐解くために、歴史を見てみよう。

キューバ式オーガニック農業にたどり着くまで

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