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別れの手紙を託し生死と向き合った音楽家の覚悟 このお手紙がお手元に届く時、僕はこの世におりません

東洋経済オンライン / 2024年2月20日 11時50分

医師からは長年の不摂生が原因ではないかと指摘された。以降は禁煙禁酒し、小さくなった胃に負担をかけないような生活を心がける。その暮らしと抗がん剤治療が奏功し、少しずつ元来の精力的なライフスタイルを取り戻していった。入院時は「60丁度でおさらばか!?」との考えもよぎったが、徐々に死は遠のいていく。

当時の心境を率直にこぼしたつぶやきを2015年8月に残している。その3年前に亡くなった音楽仲間のジョニー吉長さんを偲ぶ日記だった。

<意に染まない晩年だったとは思うが、世の中にも、ミュージックシーンにも、そして僕としては何よりも僕自身にいっぱいの贈り物をしてくれつつ世を去ったジョニーに改めて感謝の念を送りたい。


 ジョニーが最後に身を寄せていた桑名正博にジョニーの最後の様子を聞いて、一緒に追悼していたら半年経って桑名が倒れてしまった。無情を感じていたら翌年自分が倒れてしまった。
 そして僕の入院中に井上淑彦(Ts)藤井裕(B)伊藤八十八(伝説的プロデューサー)が世を去り、退院直後には石田長生(Gi、Vo)が逝った。
 なんだか悲壮になったり怖くなったりしないものですね。友人達のことと自分のことを身内のような他人事のような、曰く言いがたい距離感で眺めている。>
(2015年8月21日「ジョニー吉長の自然体(承前)」)

死の影が再び背後に近づいてきたのは、2017年の春のことだった。

「なんせ先の見えないこと」

<ピアニスト、佐山雅弘から
 ファンの皆々様、
 関係者各位へのお知らせです。
 胃癌切除後2年半無事でしたが、このたびの定期検診で腸閉塞が発見され、急遽その手術を行うことになりました。
 皆様にはご心配、ご迷惑をおかけして大変申し訳なく思います。
 必ず戻ってまいりますので宜しくお願い申し上げます。>
(2017年5月20日「ファンの皆々様、 関係者各位へのお知らせです。」)

恐れていた再発による腸閉塞だった。2017年5月下旬に外科手術を受けて生還するが、しばらくはスタッフによる近況報告が数回なされたのみで、佐山さん本人が手術やその後を語るまでには時間を要した。

<公演中止のお知らせとお詫び
 術後の体調が芳しくなく、近日のライブ活動を出来ない体調です。
 体調予想の甘さで皆さんにご迷惑をおかけしまして申し訳ありません。
 スタッフより>
(2017年6月22日「公演中止のお知らせとお詫び」)

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