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役所も黙認か「貧困ビジネス業者」驚きの手口 通帳とマイナンバーカードを取り上げられた

東洋経済オンライン / 2024年2月23日 12時0分

仕事と住まいを失い、上野公園にいたところを貧困ビジネス業者にだまされたミキオさん。「今は後悔しています。(施設を)出たくて、出たくて、何とか仕事を探しました」という(筆者撮影)

現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

正社員として働き、親に仕送りもしていた

夕飯は塩コショウで炒めたモヤシと醤油をかけた豆腐半丁とご飯。「本当は卵かけご飯を食べたい。でも、卵、高くなりましたよね。あまり買わなくなりました。卵かけご飯、本当は好きなんですけど」とミキオさん(仮名、41歳)は話す。肉や魚を口にするのは1カ月に1度くらい。「最近、いつ食べたか? 年末だったかな。たしか豚汁を作ったときに食べたのが最後です」。

【写真】一時は正社員として安定した収入を得ていたミキオさん。長時間労働や不当解雇のすえ住まいを失ったところに、貧困ビジネス業者に付け込まれた

ミキオさんはいわゆる貧困ビジネスの被害者だ。今も生活保護を利用しながら、東京23区内にある元学生寮だったという施設で暮らす。生活保護の生活扶助費は毎月約7万6000円のはずだが、業者から手渡されるのはなぜか3万~4万5000円。保護費が振り込まれる預金通帳を取り上げられているので、残りのお金がどうなっているのかはわからないという。

施設の定員は「4、50人くらい」で、入居者のほとんどは生活保護利用者。「タバコを吸う人は施設から直接渡されるんですが、その分は保護費から差し引かれます。だからなのか、中には月に1万円しか渡されない人もいますよ」。

これでは施設を出たくても、自分でアパートを借りるための初期費用を貯めることができない。また、家賃が生活保護の上限とほぼ同額の5万3000円に設定されているので、それを払い続けることができるだけの給与水準の仕事を探すのも簡単ではない。物価高に歯止めがかからない中、日々の食費を抑えることでやり繰りするしかない。

ミキオさんがこの貧困ビジネス業者と出合ったのは3年前の冬。寒空の下、東京の上野公園で時間をつぶしていたときのことだ。近寄ってきた中年男性から「住むところ、あるの? なかったらあるよ。生活保護も受けられるよ」と声をかけられた。

中学を卒業してからずっととび職として働いてきたミキオさん。このときは15年以上、正社員として働いてきた土木建築会社をクビになったばかりだった。

ミキオさんは「仕事は好きでしたよ。年収は400万円くらいで、親に仕送りもしてました。東京オリンピック関連の現場にかかわったこともあります」と誇らしそうに振り返る。

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