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役所も黙認か「貧困ビジネス業者」驚きの手口 通帳とマイナンバーカードを取り上げられた

東洋経済オンライン / 2024年2月23日 12時0分

預けるのは不安だと訴えると、マイナンバーカードは取り返すことができたが、通帳は「なくしてしまう人もいる」という理由で返却を拒まれた。通帳についてはその後も何度か交渉したが、そのたびに「会社が決めたルール」「従えないなら今日中に出ていってもらう」と脅し文句のようなことまで言われ、諦めるしかなかったという。

そして入居から1週間ほどが過ぎると、スタッフから施設の清掃の仕事をやらないかと声をかけられる。以来週1回、早朝5時から12時まで。シャワー室などの共用スペースも1人で掃除するので、かなりの重労働だ。賃金は日当5000円。

5~12時の7時間労働で日当5000円? 時給に換算すると714円である。東京都の最低賃金1113円を400円近く下回る。私がそう指摘すると、ミキオさんは最低賃金の仕組みを知らないという。「ニュースでなんとなく聞いたことはあったんですが……。(自分の働かされ方は)法律違反だったんですね」と驚いていた。

さらにもうひとつミキオさんにとって足かせになっているのが「施設を出るときは3カ月以上前までに申告すること」というルールだ。実はミキオさんはこの半年間で2度引っ越しを試みた。コツコツと引っ越し費用を貯め、自力でアパートを見つけ、入居日も決めた。生活保護利用者の不動産探しは物件も限られるため、容易ではない。ミキオさんにしてみると、施設を出たい一心だった。

しかし、いずれも施設側に報告すると、「退去はすぐには無理。違約金を払ってでも(契約を)キャンセルしてきて」と言われてしまう。不動産会社側に「3カ月先の入居の予約はできるか」と聞いたこともあるが、もちろん断られた。施設側のルールに従って退去するには、路上生活になることを覚悟して部屋を探すか、3カ月間、施設とアパートの家賃を二重に払うしかないと、ミキオさんは訴える。

少し話が戻るが、施設清掃の仕事による収入は法令違反とはいえ月2万円にはなる。こちらは手渡しなので、施設から支給される生活費と合わせると、もう少しましな食事ができるのではと思ったが、ミキオさんはこの中から引っ越し代を貯めていたのだという。しかし、転居できないのでは、その努力も報われない。

貧困ビジネス業者に対して行政の対応は?

ほかにも問題を上げるときりがない。部屋の壁紙は入居当初から破れてコンクリートがむき出しになっているし、生活音もダダ漏れ。「壁紙はいくら言っても直してくれない。壁が薄いせいか、台所の換気扇を付けただけで、(別の入居者から)すごい剣幕で『ぶっ飛ばすぞ!』『もっと気ぃ使えよ!』と怒鳴られます。僕自身、部屋が(共用の)トイレの近くなので扉の開け閉めがうるさくて眠れません」とミキオさん。節約のためにもっと自炊をしたいが、それもままならないという。

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