1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

役所も黙認か「貧困ビジネス業者」驚きの手口 通帳とマイナンバーカードを取り上げられた

東洋経済オンライン / 2024年2月23日 12時0分

こうした実態をCWは知っているのだろうか。

ミキオさんによると、「早くここを出たほうがいい」と心配してくれるCWもいたが、業者の追及まではしてくれなかった。後任のCWは、最近も窮状を訴えたうえで「このままでは施設からいなくなるしかない」と業者への対応を求めたが、「いなくなられると困るんだよねー」と他人事のように言われておしまいだったという。

私は取材の中で、施設がある自治体の担当職員と話をする機会があった。なぜ貧困ビジネス業者を規制しないのかという質問に対し、おおむね次のような答えが返ってきた。

「施設に入ったのも、通帳を預けたのも無理やりではなく、一応ご本人の意思ですよね。われわれには業者を指導、処分するための法的な根拠がない」

私が、処分や指導までしなくても、マイナンバーカードや通帳の取り扱いなどについて不満の声を聞いていると伝えるだけで抑止力になるのではと重ねて尋ねると「うーん」と言ったきり黙ってしまった。

生活保護費の財源には限りがある。本当に税金を節約するつもりなら、保護費を搾取し、利用者の自立を阻む貧困ビジネス業者を牽制したほうがよほど効果があるのではないか。現行の法制度の下でも、行政ができることはあるはずだ。

ミキオさんは生活保護制度のことも、不当解雇のことも、最低賃金の仕組みも知らないと言った。そして「もう少し自分に知識があれば」とうなだれた。

だまされる側が悪いのか

世間はミキオさんが貧困ビジネス業者にだまされたのは、自己責任だというだろうか。私はそうは思わない。自分の家族や友人であれば、好きに説教すればよい。しかし、社会的にはだまされる側より、法律を犯してだます側のほうが圧倒的に悪い。

貧困ビジネスの問題を考えるうえで、個人のいたらなさをあげつらう行為は、業者の悪質さから目を背けさせるだけでなく、告発しようとする被害者を委縮させる。結果的に業者を利するだけだ。だまされる人がいなくなれば、貧困ビジネスも悪質企業もなくなるという意見は一理あるかもしれないが、それは義務教育や社会人教育のあり方という別の話である。

最近、ミキオさんは仕事が決まった。この間もハローワークには通い続け、職種や正社員にこだわらず探したつもりだが、安定した収入や社会保険があることなどを条件にすると、面接を受けても不採用が続いた。しかし、ついにホテルのベッドメイクの仕事が決まったという。

「こんなところ、たとえ家賃を二重払いすることになっても、今度こそ出ます」。ミキオさんがいつになく強い口調で言った。しばらく卵かけご飯は食べられそうにない。

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。

藤田 和恵:ジャーナリスト

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください