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役所も黙認か「貧困ビジネス業者」驚きの手口 通帳とマイナンバーカードを取り上げられた

東洋経済オンライン / 2024年2月23日 12時0分

ただその会社は異常な長時間労働だった。「早朝から夜10時までということも珍しくなかったです。人が足りないと言われると、断れなくて。3カ月近く休みがなかったこともありました」とミキオさん。激務に加え、緊張を強いられる現場では人間関係はすさみがちだ。ささいなことで親方と言い争いになり、そのままクビを通告されたのだという。

不当解雇ではないか。私がそう指摘すると、ミキオさんは「でも、今度喧嘩をしたら解雇という約束だったので」と言葉少なに語る。

貧困ビジネスの被害者に

クビになった後は社員寮を追い出され、親戚宅に身を寄せていたが「なんとなく気まずくなって」家を飛び出した。すぐに所持金は尽き、ネットカフェなどで寝泊まりするのも厳しくなっていく。男に声をかけられたのは、ちょうどそんなタイミングだった。

男はミキオさんの不安に付け込むように「お風呂もあるよ。お酒も飲めるよ。家具も食料もあるよ」と畳みかけてきたという。

当時、生活保護という制度を知らなかったミキオさんは男に尋ねたが「教えるとみんな嫌がるから」とはぐらかされてしまう。男は翌日早朝の集合時刻と場所を伝えると、周囲にいた路上生活と思われる人たちにも声をかけ始めた。翌朝、集合場所にはミキオさんを含めた数人が現れた。

ミキオさんたちはワゴン車で東京郊外のマンションに連れていかれ、「待機部屋」と呼ばれる一室に収容される。1週間ほど雑魚寝状態が続き、その間、1日500円と袋めん2つが与えられたという。その後、今度は東京23区内の施設に入居させられ、その足で生活保護の申請に行くよう指示された。

役所には業者のスタッフが同行。スタッフは窓口で自らのことを「支援者です」と告げたという。「申請はすんなり通りました」とミキオさん。このとき担当のケースワーカー(CW)から説明され、初めて生活保護制度のことを知ったという。

「元気な自分がどうして? って感じました。安心したというよりは、悪いなと思いました」

ただこのときは、早く自立すればいいとも考えた。しかし、一度陥った“蟻地獄”のような仕組みから逃れるのは想像以上に難しかった。この施設で3年間も暮らすことになるとは、ミキオさん自身も思っていなかったという。

施設を出ようと思っても出られない

ミキオさんが遭遇した業者の運営母体は株式会社。最初に驚いたのは、スタッフからマイナンバーカードと、生活保護費を振り込むための預金通帳を新たに作り、施設に預けるよう指示されたことだ。毎月保護費から家賃を差し引いた生活費を渡すのが会社のルールだと説明された。カードや通帳を預けることについての同意書は書いていないという。

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