EU版iPhoneの「退化」を日本も無視できない理由 DMA対応でアプリストアなど開放、リスクは増大
東洋経済オンライン / 2024年2月27日 11時0分
AppStore以外のアプリストアが開放され、決済手段も選べるようになることは、前進ととらえられなくもない。
アップルが他の決済手段の導入を禁止し、開発者に対してアプリ内課金から最大30%の手数料を徴収していることなどに反発する声があることは、人気ゲーム「Fortnite」の開発元であるエピックゲームズとアップルの訴訟などのニュースからご存じの方も多いはずだ。
ジョブズも苦慮していた“ジレンマ”
しかし、一連の規制緩和が本当に前進あるいは進化した結果なのかというと、大きな疑問符がつくと筆者は考えている。なぜなら、それらはパーソナルコンピュータの歴史上、もっとも困難な挑戦を成功に導いてきた“秘伝のタレ”の一部だからだ。
iPhone、iPadは、それぞれスマートフォン、タブレット端末というジャンルの製品だが、その本質はパーソナルコンピュータであり、WindowsやMacと本質的な違いはない。その歴史を遡ると、黎明期から、悪意あるソフトウェア(ウイルス、マルウェア)の脅威と隣り合わせだった。
生前、スティーブ・ジョブズは「開発者に先進的でオープンなプラットフォームを提供すると同時に、iPhoneユーザーをウイルスやマルウェア、プライバシー侵害などから守ることは簡単な仕事ではない」と話していたというが、多くのコンピュータエンジニアは彼の意見に同意するはずだ。
先進的な機能や高い性能を開発者が使いこなせば、それまで実現できなかったアプリケーションを生み出せる。一方で、同時にそれは“より高度な悪意あるソフトウェア”を生み出すための道具にもなりうる。
開発者にとっての自由度の高さとセキュリティの両立は大きなテーマで、iPhone(iOS)の場合、App Storeを組み込んでサードパーティ製アプリを動かせるようになった時点では、小さな“箱庭”でアプリを動かせるだけだった。
スマートフォンは、携帯電話網を使って通信できる多様なセンサーを内蔵するコンピュータだ。その機能を単に開放するだけでは"悪意あるソフトウェア”に新たな自由を提供するだけになってしまうため、用心深く機能の開放を進めてきたのだ。
現在、iPhoneの“箱庭”はより大きく、自由度の高いものになっているが、それはアップルが悪意あるソフトウェアやプライバシー侵害などへの対策を施すとともに、各種機能を開発、搭載してきたからにほかならない。
その結果として今日に至るまで、ウイルス、マルウェアはiPhone上で確認されておらず、ユーザーはアンチウイルスソフトなどをインストールせずに使いこなすことが可能になっている。
新たなiOSで導入する公証制度とは?
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