EU版iPhoneの「退化」を日本も無視できない理由 DMA対応でアプリストアなど開放、リスクは増大
東洋経済オンライン / 2024年2月27日 11時0分
一方でブラウザエンジンには、JITコンパイラ(ウェブアプリを効率的に動作させる仕組み)、ウェブサンドボックス(ウェブアプリが他アプリに干渉できないよう隔離する技術)、パスキー(認証技術)が含まれている。これらはセキュリティ上、重要な役割を担い、セキュリティホールとなりやすい要素も含んでいる。
つまり代替ブラウザエンジンを選択する場合、ウェブを通じての攻撃への対処は、アップルの手を離れることになる。
iOS 17.4以降の変更点は多岐にわたるため、とても本記事だけで網羅はできないが、可能な限りの安全対策は施されているものの、セキュリティとプライバシーに関する品質をどこまで維持できるかは、代替アプリストアやブラウザエンジンの提供者、それにユーザー自身の選択にかかっているのだ。
では、日本でも規制対象となる可能性が高い、代替決済手段の提供についてはどうだろうか。
EU版iPhone向けのアプリ開発者は、従来通りのアプリ配信と決済に加えて、App Storeでアプリを流通させつつ、アプリ内課金に代替決済プロバイダーを利用する方法と、代替アプリストアを利用する方法の3つからアプリの流通経路を選べるようになる。
これに伴い、これまでシンプルだったApp Storeの手数料は、基本手数料、Core Technology Fee(CTF)、決済手数料の3つに分けて計上される。
App Storeの手数料が30%だと広く知られているが、これは基本料であり、売り上げの小さな開発者や登録初年度の開発者は15%の割引手数料が適用される。ヨーロッパ市場における直近の実績では、30%の手数料を支払っているアプリは全体の3%だ(アプリ数の比率であり、決済金額ベースではない点に注意)。
EU版App Storeでは、この基本手数料が17%と10%に引き下げられ、App Store以外のアプリストアを利用する場合は徴収されないこととなる。
分離された決済手数料は3%。この数字も決済サービスとして十分にリーズナブルと言えるだろう。こちらも代替決済手段を用いる場合、アップルが徴収することはない。
CTFを支払う開発者は全体の1%
つまり、代替アプリストアと代替決済サービスを利用する場合に、アップルが徴収するのはCTFだけということになる。
CTFは、従来一括だった手数料からシステムの利用料を分離したものだ。ただしCTFの支払いが必要になる開発者は、全体のわずか1%にすぎない。99%のアプリ開発者にとっての手数料は、以前の料金体系と同等、あるいは安くなる。CTFは、1つのアプリを大量に配布する、ごく一部の大手開発者のみが支払う仕組みだからだ。
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