EU版iPhoneの「退化」を日本も無視できない理由 DMA対応でアプリストアなど開放、リスクは増大
東洋経済オンライン / 2024年2月27日 11時0分
iPhoneの悪意あるソフトウェアへの対策は、実はシステム的な側面だけで完結するものではない。安全性を重視したシステム設計としたうえで、App Storeで配布するすべてのアプリを人間が審査している。
しかしApp Store以外のアプリストア(代替アプリストア)のダウンロードが解禁されると、そこでの審査は代替アプリストアの運営者自身が行わねばならない。
詐欺アプリ、海賊版、プライバシー侵害、コンテンツガイドラインなどの審査は、ストアごとに異なるものになるが、当然ながらストア運営者はiOS自体の開発を行なっているわけではない。
そこでアップルはEU版iOS 17.4以降では、「公証制度」を導入する。こればノータライゼーションと呼ばれるプロセスで、アプリの機能や内容についての審査は行わないが、基本的なセキュリティ、プライバシーガイドラインへの準拠を確認し、ウイルス・マルウェアのスキャンを行ったうえで、iOSへのインストールを可能にする“カギ”をアップルが発行する。
ユーザー目線に配慮した工夫もいくつかある。アプリの出自やどのような機能を使っているのかなどの詳細について、App Storeとは異なるストアでも共通の表示となるよう「シート(情報の一覧)」を用意し、ユーザーがそのアプリをインストールすべきかどうかの判断を下しやすくしたという。
アプリストアからインストールするアプリがアクセスできるデータ・センサーについて、ユーザーがストアごとに許可・不許可の設定も行えるようにしている。
これらは最低限の品質を確保し、ユーザー自身によるアプリの安全性判断を助けるものではあるが、これまで悪意あるソフトウェアをシャットダウンしてきたApp Storeと同じ品質を保証するものではない。
もちろん、代替アプリストアがAppStoreと同等の品質管理を行えれば、必ずしも“穴(セキュリティホール)”とはならない。また、ストア選びはユーザー自身の選択でもある。
しかし自由にはリスクが伴う。これを前進と呼ぶ人もいるだろうが、安全性の面では後退であり、パソコン世代への回帰だ。
増大するユーザー側の責任
代替ブラウザエンジンの許可に関しても、そこで得られる自由にはリスク増加の危険を伴う。その責任はユーザー自身が負うものだ。
前述したWebXRへの対応について、アップルがiPhone向けに提供するAR Kitという機能を使わせるがために、WebKitのWebXR対応がおざなりになっているのではないか、それこそが市場独占の弊害である、という言説は当然あるだろう。
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