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東証が「低PBR対策を要請」その背景にある事情 長年の問題だが、23年に急に議論が盛り上がる

東洋経済オンライン / 2024年2月28日 10時0分

低PBR、議論が盛り上がった背景とは?(写真:kaki / PIXTA)

昨年3月に東証が出した、上場企業に対する低PBR対策の要請。その要請はどのような背景のもとに出されたのでしょうか。みずほ証券チーフ株式ストラテジスト・菊地正俊氏の著書『低PBR株の逆襲』を一部抜粋・再構成して、お届けします。

「PBR1倍割れ」の意味するもの

PBRとはPrice Book-value Ratioの略で、株価が1株当たり純資産(簿価)の何倍まで買われているかをみる投資尺度です。現在の株価が企業の資産価値(解散価値)に対して割高か割安かを判断する目安として利用されます。

【図表】安倍政権以降のコーポレートガバナンス改革の流れ

PBRが1倍を割れていると、「株価が解散価値を下回っている」と言われることがあり、投資家の直感に訴えるわかりやすい指標ですが、企業は将来にわたって無期限に事業を継続するというGoing-concern(継続企業)が前提になっていますから、実務上はあまり意味のある指標とはいえません。

また、保有資産が時価を大きく下回っていると減損しなければならないという会計のルールはあるとはいえ、企業の純資産が本当に現在の公表値(簿価)なのかは、実際に資産を売ってみないとわからない面があります。

加えて、日本企業の場合、従業員を簡単に解雇できないので、実際に企業が解散することになった場合には、従業員への割増退職金等が大きく膨らむ可能性もあることに注意が必要です。

そもそも東証は2023年3月末に発表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」で、現状分析に用いる指標の例として、

1. 資本コスト……WACC(加重平均資本コスト=借入にかかるコストと株式調達にかかるコストを資本構成で加重平均したもの)、株主資本コスト

2. 資本収益性……ROIC(投下資本利益率)、ROE(自己資本利益率)

3. 市場評価……株価・時価総額、PBR、PER(株価収益率)

を挙げて、「どの指標を用いるかについて一律の定めはありませんが、投資家ニーズ等を踏まえ、ご検討ください」と述べました。東証は、どの指標にフォーカスするかは企業の自主性に任せると言ったのに、PBRだけがマスコミで強調されたことに違和感を覚えたようです。

ただ、そうはいってもPBR1倍以下(低PBR)というのは投資家の直感に訴えるわかりやすい指標ですから、本記事でも東証の要請への対応策を「低PBR対策」という言い方で総称していきます。

2023年に入って急に議論が盛り上がった

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