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東証が「低PBR対策を要請」その背景にある事情 長年の問題だが、23年に急に議論が盛り上がる

東洋経済オンライン / 2024年2月28日 10時0分

東証におけるPBR1倍割れは長期間にわたって続いている問題ですが、2023年に入って急に議論が盛り上がりました。

東証のPBR1倍割れ企業に対する新しい施策は、2022年7月に設立された東証の「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」で継続的に議論されて出されたものです。

フォローアップ会議には9名のメンバーがいますが、2022年7月の初回会合で、マネックスグループの松本大会長は「日本の上場企業の平均PBRが低い理由は、株主の権利を守っていないからだ。株主が会社を買収して精算できれば、労働債権等を控除しても、PBR0.8倍程度では精算できると思われ、裁定が効き、PBR0.5倍以下で放置されるとは思えない。公開市場の設計には、株主の視点をもっと多く採り入れるべきだ」との意見書を提出しました。

一方、企業に一律にPBR1倍を求めることについて、「PBRはマクロ経済情勢や株式市場動向に左右され、業種による特性もあるため、企業が自ら決めることができるROE目標にとどめるべき」との反論も出ました。

2023年に急に議論が盛り上がってきた東証の低PBR対策には唐突感がありましたが、安倍政権以降続いているコーポレートガバナンス改革の一環と捉えると違和感がなくなります。

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2014年8月に公表された、伊藤邦雄一橋大学大学院教授(当時)を座長とした、経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書(通称「伊藤レポート」)は、日本は長期投資家不在の「資産運用後進国」だと指摘したうえで、「資本コスト(企業が資本を調達・維持するのに必要なコスト)を上回るROEを、そして資本効率革命を」と、まさに東証が2023年3月に要請したことの必要性を言っていたのです。

「伊藤レポート」は、「個々の企業の資本コストの水準は異なるが、グローバルな投資家から認められるには、まずは第一ステップとして、最低限8%を上回るROEを達成することに各企業はコミットすべきだ。それはあくまで最低限であり、8%を上回ったら、また上回っている企業はより高い水準を目指すべきだ」と主張しました。

この「伊藤レポート」の後、東証1部(現プライム市場)企業のROEの分布は、少し右の高いほうにシフトしたので、一定の効果があったと評価されています。

企業に投資家との対話の促進・開示を求める

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