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東証が「低PBR対策を要請」その背景にある事情 長年の問題だが、23年に急に議論が盛り上がる

東洋経済オンライン / 2024年2月28日 10時0分

また、今回の東証の要請は、企業に投資家との対話の促進とその開示を求めていますが、2014年2月に制定されて2回にわたって改訂されたスチュワードシップ・コードは、「機関投資家は投資先企業との建設的な目的を持った対話を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである」と規定しています。

2015年6月に制定されて、その後2回にわたって改訂されたコーポレートガバナンス・コードは原則5-2で、「経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資・人的資本への投資等を含む経営資源の配分等に関し、具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである」と規定しました。

これらのコードを表面上、遵守しているとしていた企業が多かったものの、実際には実施しきれていなかったため、東証の今回の要請につながったと考えられます。

「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」のメンバーであるアストナリング・アドバイザー合同会社の三瓶裕喜代表(元フィデリティ投信のヘッド・オブ・エンゲージメント)は、2023年5月18日のみずほ証券の講演で次のように述べましたので、これが東証の要請の背景にあると考えられます。

東証の要請の背景にあること

・2022年7月に開催された東証の「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」で、新市場区分・改革への期待外れ、TOPIX改革の必要性、根本的問題(PBR1倍割れ企業の多さ)、経過措置終了時期の早期決定などが議論された。

・日本企業の経営者は、①資本コストはCAPM(Capital Asset Pricing Model、資産のリスクと期待リターンの関係式を表す均衡モデル)を知っていればわかっていると思っている、②PBRはROEで決まると思っているなど、金融リテラシーが低い。

・日本市場は海外市場に比べて、成長が期待される企業が少ない一方、株主還元が重視される企業や事業撤退・資産売却などの構造改革が求められる企業の割合が多い。

・既存のビジネスモデルを見直しイノベーションに挑む力が、日本企業は劣っている。

・PBRとROEの関係は、①PBR=ROE÷益回り(株価が示唆する株主資本コスト)、②PBR=ROE×PERの関係の2つある。ROEが株主資本コストを下回る状況では、①の評価と解散価値(PBR1倍)のあいだで評価される。ROEが株主資本コストを超えるにつれて、成長に回す投資資金が潤沢になる。成長余地がある場合には成長率を押し上げることが期待され、②PER評価に視点が移る。

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