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日本はどうする?欧州が温暖化ガス9割減案を提示 野心的な目標を掲げ、域内産業の移行を支援

東洋経済オンライン / 2024年2月28日 9時30分

すなわちEUの法律で2040年削減目標が決まれば、その中間地点としての2035年目標は機械的に計算できる。したがってEUは2040年目標が決まった際には、COP28決定に合わせて必ず2035年目標も算定し、国連事務局に提出するはずだ。そして2040年目標が90%削減で合意されるのであれば、提出する2035年目標も必然的に野心的なものになる。

90%削減の科学的な根拠と実現への道筋

COP28に先立って出されたIPCCの報告書によると、気温上昇を1.5度に抑えるには、2035年には2019年比で温室効果ガス60%削減、2040年には69%削減が求められる。すなわち欧州委員会が提案する2040年90%削減目標は、世界で求められる平均的な削減量を上回る。

なお、今回の提案は、「気候変動に関する欧州科学アドバイザリーボード」の提言を踏まえたもので、同アドバイザリーボードは80%、85~90%、90~95%という3つの選択肢を示している。

そうした中、欧州委員会は90%削減を推奨した。これはまさにEUが脱炭素化を環境対策のみならず、巨大な産業振興策として位置づけ、そのトップを走ろうという政治的野心を示す。上の図からもわかるように、EUは温室効果ガスの排出経路を2050年に向かってまっすぐに下げていくのではなく、2040年に向けてより急激に削減しようとしているのだ。

そもそも1.5度達成のために世界全体が2050年にネットゼロを目指すのであれば、産業革命以降、歴史的に先んじて大量の温室効果ガスを排出してきた先進国は、より早くネットゼロを達成することが求められる。今回の欧州委員会の提案は、そのことをも視野に入れた提案ということになる。

また、この提案をもって、中国などの新興国にさらなる削減努力を迫っていく狙いがあるとみられる。この野心的な目標がEUで合意されれば、間違いなく世界の脱炭素化の先頭に立つことになる。

その実現のための施策として分野ごとに詳細な提案が記されている。中でもエネルギー分野における再生可能エネルギーや原子力の一層の活用、エネルギー効率の改善、エネルギー貯蔵、CCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯留)などが目を引く。

これらの施策で2040年までに化石燃料への依存を80%減少させ、2040年以降には脱炭素化を達成できるとした。そのためにはカーボンプライシングと資金調達がEU域内の企業にとって重要であるとし、中でも輸送部門では技術的ソリューションとカーボンプライシングの組み合わせで脱炭素化を実現するとされている。これらの施策をテコに、EU域内の産業振興を進める方針が強調されている。

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