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日本はどうする?欧州が温暖化ガス9割減案を提示 野心的な目標を掲げ、域内産業の移行を支援

東洋経済オンライン / 2024年2月28日 9時30分

もちろん合意までには困難が待ち受ける。そもそもEUの「2030年に55%削減」という現在の目標自体、達成が危ぶまれている。

欧州委員会の報告によると、今のEUの削減ペースでは、2030年に51%程度までにしか削減率が届かないという。2030年に向かっての努力も足りていない現在、その10年先についてさらなる野心的な目標を目指すことが困難であることは間違いない。

右派政党が伸長、農家の反発も

さらに6月の欧州議会選挙では右派政党が議席を伸ばす可能性も指摘されており、野心的な対策の成立が難しくなる可能性もある。また足元では、脱炭素化の規制に不満を持つ農家の反発も広がっており、今回の提案でも農業分野の一部について当初の案から後退せざるをえなかった。

しかし欧州委員会の鼻息は荒い。いわく、「90%削減は、EU域内企業の競争力を向上させ、将来にわたって安定した仕事を創出し、未来のクリーンテクノロジーマーケットの開発でリードできるようになる。さらに、より強靭で戦略的な自立性を強化できる」と。

いずれにしてもEUは2024年中に2040年目標を決め、2035年目標を遅くとも2025年早々に国連事務局に提出することが確実だ。

実はパリ協定の合意に至る交渉では、削減目標の期間を5年ごとにするか10年ごとか、すなわち次の目標が2035年か、2040年かという議論が長く続き、EUと日本はその中でも10年という目標期間を支持する側であった。そのためEUがこのたび2040年目標を出したことによって、日本も2040年目標でよいのではと主張する一部の省庁幹部がいると聞く。

目標達成が10年後であれば、政権は短期的には責任を問われにくい面もあるからだ。

しかし2035年目標であれ、2040年目標であれ、少なくともIPCCが示す科学的根拠に基づいて提出することが必要だ。すなわち2019年比で2035年に60%削減か、2040年には少なくとも69%以上の目標が必要となる。

ましてや今回、EUが2040年に90%(基準年1990年)という目標を世界に先駆けて提示した今、日本が2040年目標を打ち出すにしても、69%減程度ですますわけにはいかないだろう。

なぜならば、各国の目標が正式にパリ協定での目標として認められるためには、新たに開かれるCOP会合の9カ月から12カ月前に、国連事務局に目標案を提出し、自国の経済力や責任に照らして十分な削減努力をしているという説明をしなければならないからだ。

エネルギーと環境政策の一体的な議論を

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