転換点を迎えたウクライナ「10年戦争」の行方 アウディーイウカ要塞の陥落が戦局にもたらす意味
東洋経済オンライン / 2024年2月28日 13時0分
しかし、ゼレンスキー以上に人気があるといわれるザルジニーに代って軍の指揮をとる人物が果たしているのかどうか、という問題は残った。新しい総司令官シルスキーはロシア人であり、ソ連時代のソ連軍の中で育った人物である。
しかも2023年5月のバフムートの敗北の責任者でもあったことで、その任に堪えられるのだろうかという噂があった。
そのシルスキーも、モスクワでプーチンのインタビューが行われている頃、ドイツのZDFのインタビューを受けていた。このインタビューは、クレムリンの豪華な部屋でのプーチンのインタビューとは違い戦地の装甲車の前で軍服のまま行われていた。
戦線の状況についての厳しい問いかけに、静かに、ある意味冷静にシルスキーは答えていた。それは彼の表情からもわかった。戦況は厳しい状況であるが、ウクライナ軍はなんとか耐えていると。そして、今回の戦争は科学的兵器による戦争であるゆえ、NATOの武器援助が是が非でも必要であると述べていた。
しかし気になったのは、「この戦争は2014年から継続している」という答えだった。シルスキーから見ても、この戦争はすでに10年経過しているというのだ。
冒頭で「ウクライナ戦争は、3年目に突入した」と書いたが、当事者の中ではすでに10年も戦っているという意識があるということだ。
それは、とりわけこの2年間の戦争で、大きな戦略上のポイントとなったバフムート(アルチェモスク)やアフディフカなどの、ミンスク合意で定められた国境線上の要塞を巡る攻防線を見るとよくわかる。
すでに2023年10月、ドンバスの中心地ドネツクの北に位置する化学工業都市アフディフカは、ロシア軍によって包囲されつつあった。このドネツク近郊の小都市は、ミンスク合意の際、ドンバス地区から切り離されたウクライナの工業都市だった。
この地域は工業と水源をもつことで、ウクライナの戦略上きわめて重要な地域であり、2014年以降この地域からドネツクに対する攻撃がしばしば行われていた。
その意味で2014年以降、戦争は断続的に継続していたということなのだ。ロシアが介入することになった2022年2月24日以後も、難攻不落ともいえるこの要請都市への攻撃はロシア側の重要な戦略の一つであった。
アフディフカ要塞の陥落
ドンバスから見ればこの地域はドンバスの一部であるが、ウクライナからいえば、ドンバスに渡せない重要な基地であった。
ウクライナはこうした要塞都市をマリウポリ、バフムートなどに持ち、そこから徹底抗戦を行っていた。ロシア軍が、こうした要塞(幾重にも地下にトンネルを掘り、ミサイル攻撃に備えてきた要塞)を攻撃しあぐねていたことも確かである。それはロシア軍が何度か撤退したことを見てもわかる。
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