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転換点を迎えたウクライナ「10年戦争」の行方 アウディーイウカ要塞の陥落が戦局にもたらす意味

東洋経済オンライン / 2024年2月28日 13時0分

ゼレンスキーはその頃、ドイツとフランスに出向き援助を取り付けてきたが、もはや援助によって、戦況が変わるという状況ではなかった。その意味で、NATO諸国がこれ以上深入りをしても、全体の戦況が有利になる可能性はないともいえる。

はっきりいえば、ここらで停戦を打つ潮時とも言える。

プーチンもインタビューの中で語ったが、ロシアは経済的にも軍事的にも弱い国だと西側が誤解しているという点である。

最近出版された『西欧の敗北』(La Défaite de l’Occident, Gallimard, 2024)の中で、エマヌエル・トッドも書いているが、ロシア経済は成長し、ロシアは予想を超えて強い国になっている。

ロシアは予想を超えた強国に

プーチンによると、購買力平価や自国通貨で見た場合、ロシアはGDP5 位の国(中国、アメリカ、インド、日本に次ぎ)で、ヨーロッパ最大の国だというのである。

トッドは、ロシアの経済成長の背景の指標に技術者の数の多さをあげていた。アメリカの技術者の多くが、産業ではなく金融に就職するのに対し、ロシアでは研究所や産業に就職しているという事実が、ロシアの工業力を強くしているのだという。

トッドはウクライナについても、興味ある事例をあげている。この国は3つに分かれているという。

①リヴィウ(ルヴォフ)を中心とした西側(ウルトラナショナリストで、核家族型個人主義的地域)、②キーウ(キエフ)を中心とした中央(個人主義的でもあり家族主義的でもある、アナーキーな地域)、そして③ドネツク、ハリキィウ(ハリコフ)、オデーサ(オデッサ)を持つ東と南の地域(家族主義的でウクライナに喪失感をもった地域)である。

この3地域は1991年の独立以後も1つの国民としての結束力を欠き、ある意味アナーキーなまま来ているという。国家を集中させ、統一させる力を欠いているというのだ。

こうした国家の舵取りもとても難しい。ゼレンスキー政権は早く停戦を決断し、新たな国家づくりをこの廃墟の中からしっかりと進めるべき時かも知れない。NATO諸国もロシアも、戦争ではなく平和と復興に支援をすべき時だろう。

的場 昭弘:哲学者、経済学者

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