転換点を迎えたウクライナ「10年戦争」の行方 アウディーイウカ要塞の陥落が戦局にもたらす意味
東洋経済オンライン / 2024年2月28日 13時0分
ドンバスの中心地である大都市ドネツクは、このアフディフカ要塞があるかぎり、ウクライナからの直接攻撃を受けていた。そのため、この都市の攻撃に、ロシアは2024年になって総攻撃をかけていた。それは、プーチンの大統領選挙作戦ともいわれた。
シルスキーの最初の仕事は、この要塞を是が非でも守ることであった。シルスキーも増員をかけ、この要塞の守りを固めていた。
しかしロシア軍は北の高台の要塞を昨年に占領し、丘から低地を望む形で攻撃を繰り返してきた。一方南側の住宅地からも少しずつ包囲網を縮めながら、この町を包囲するように攻めていた。
2024年2月に入り、北の高台から工場地帯と住宅街を分断するようにロシア軍がなだれ込み、ウクライナ軍の要塞は完全に分断されてしまった。
プーチンとシルスキーがインタビューを行っていたのは、まさにこの頃であった。シルスキーが深刻な顔をしてたいへんな状況だといったのは当然であった。ウクライナ軍は2年間、この要塞を守り続けていただけではない。2014年以来ずっと守り続けていたのだ。
シルスキーは突如、アフディフカを守る兵士たちに全面撤退を告げた。しかし、「時すでに遅し」であった。分断されたウクライナ軍は相互の交流も途絶え、とうとう2月18日、総崩れを起す。
武器もなにもかも残したまま、軍は崩壊しながら退却を始めたのである。この崩壊の状況は、ウクライナ軍にかなり大きな衝撃を与えたと思われる。
アフディフカ要塞陥落が戦争の転換点に
アフディフカの崩壊は、ある意味第2次世界大戦のスターリングラード(ボルゴグラード)の戦いに近い象徴的意味を持っていたと思われる。それは2014年以後のウクライナによるドンバス干渉の最大の基地が失われたからである。
これは10年にわたる戦争の転換点ともなる敗北かもしれない。崩壊以後、ロシア軍の勢いは止まらずどんどん西進している。もちろん、まだまだ防衛戦はあるがアフディフカの象徴的意味は大きいともいえる。
それはアフディフカが、ドンバスのドネツク近郊に位置する戦略上の重要都市であったことで、ドンバス地域をウクライナから分離独立させない重要な戦略上の地点であったからだ。ここからの攻撃が行われうる限り、ドネツク奪還もありうるという国民の期待を背負った要塞でもあった。
この都市が失われれば、ロシアにとってもはや目障りの地点はなくなる。と同時にウクライナのドンバス奪還の望みが断たれる。そうなるとウクライナに、自由に侵攻することができるようになるからである。
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