モバイルトイレ、NUKUMARU…トヨタの新たな挑戦 高齢者や障がい者、災害を「自分ごと」として
東洋経済オンライン / 2024年3月3日 11時0分
トヨタが2024年春頃の発売を目指す「モバイルトイレ」。筆者が実機を初めて見たのは、ジャパンモビリティショー2023の会場内に設置された、未来の東京を実感できる「Tokyo Future Tour」の「EMERGENCY」コーナーだった。
場内が暗転し、いきなり「ゴジラ来襲」という演出。映画『ゴジラ-1.0』とコラボし、来場者に有事の臨場感を体感してもらうことで、有事におけるモビリティのあり方を考えてもらおうという試みである。
あくまでもエンターテインメントとしての位置付けながら、東日本大震災やコロナ禍といった過去体験から「大規模な災害は自分自身の生活と直結する、決して架空の話ではない」という思いを抱いた来場者は少なくないはずだ。
モバイルトイレの実機を間近で見ると、人が生きていくためには、さまざまなシーンでトイレが必要であることを考えさせられる。
また、モバイルトイレは有事のみならず平時においても、屋外イベントやキャンプ場などで、特に高齢者や障がい者が「もっと楽しく、安心して外出したい」という気持ちの後押しにつながるという発想も理解できる。
RAV4が牽引するモバイルトイレ
展示されたモバイルトイレは、SUVの「RAV4」で牽引する方式だった。側面に横幅約90cmで傾角5度のスロープがあり、中に入ると車いすでも利用しやすいレイアウトで、トイレは水洗式。手洗い場は、新幹線でも導入されている節水効果が高い真空式だ。
モバイルトイレの後部空間には、真空ポンプ、エアタンク、そして汚水タンクを装着する。作動させるための電力の確保は、牽引車からの給電機能、発電機、または家庭用コンセントなど、さまざまな方法で可能な仕組みである。
モバイルトイレを開発したトヨタ自動車によれば、健常者向けの災害トレーラー方式の移動トイレは実在するが、車いす利用者や介護者などの使用性を重視した移動式トイレはほとんど普及していないため、トヨタとして新規に設計したという。
設計にあたっては、牽引免許が不要で普通免許で牽引できる総重量750kg以下とし、トイレ内で車いすが転回しやすい空間(直径約150cmで360度の転回が可能)を確保しつつ、モバイルトイレ全体をできるだけ小さなサイズにすることが重視された。
排水については、モバイルトイレを設置する自治体が指定するくみとり業者に依頼する。トイレ約100回の使用で、汚水タンクは満タンとなる。
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