モバイルトイレ、NUKUMARU…トヨタの新たな挑戦 高齢者や障がい者、災害を「自分ごと」として
東洋経済オンライン / 2024年3月3日 11時0分
「NUKUMARU」は、移動式の本格的なミストサウナ(蒸気浴)だ。現行モデルは、「ハイエース」を改良したもの。すでに長野県飯山市で実証実験を行っている。
それにしても、なぜトヨタ本社がこうした発想を具現化したのか?
近年、オートキャンプの流行によって、キャンピングカー専門事業者らがハイエースなどをベースとした各種モデルを販売しており、そうした中にはシャワー設備を持つものがある。また、キャンピングカーショーなどでは、バスタブやサウナを装着するコンセプトモデルが登場することもある。
これらに対して、NUKUMARUは当初、Mobility for Allの観点から介護や介護予防を想定していた。ところが、ジャパンモビリティショー2023ではさらに発想を広げ、美容やレジャーといった分野も視野に入れたプレゼンテーションを行っており、筆者は驚いた。
公開されたプロモーションビデオは、かなりソフトなタッチで仕上げてあって、身体的には元気な高齢者が「社会とのつながり」をより感じる機会をつくるというテイストのシナリオだった。
さらに、若い女性に向けてのミストサウナによる美容効果の提案や、モバイルトイレと同じく災害時での避難施設などでの利用も、NUKUMARU事業として想定することになった。
こうしたNUKUMARUの多様性の追求に対してトヨタの社会貢献推進部は、2018年に登場したトヨタの新交通システム「e-Palette」など、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)を検討する中で、「NUKUMARUはMaaSの事業化を検証するコンテンツの1つ」という解釈を示す。
現在のNUKUMARUはハイエースをベースとしたものだが、「ハードウェアありき」ではなく「社会に役立つサービスの価値とは何か?」という事業としての軸足がしっかりあるのだ。
次世代技術を盛り込んだハードウェアではなく、「事業化の観点から、どうすれば社会実装できるか」という、社会におけるモビリティのあり方を深く考えるプロジェクトなのである。
認知症の人のナビアプリ「ツギココ」
続いて、「ツギココ」。これは、認知症の人が道に迷わないように、「次はここ」と家族がやさしく見守るような発想のアプリである。
特徴は、目的地設定が簡単で感覚的にすぐ使えること。例えば、画面上に「病院」「公民館」「コンビニ」「自宅に帰る」という4つのアイコンを設け、歩行中にルートから外れたら音や振動で知らせると同時に、画面上にわかりやすい案内表示を出すなどだ。
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