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「伝説のエンジニア」が明かすエヌビディアの死角 ラピダスや孫正義氏の半導体戦略はどう見る?

東洋経済オンライン / 2024年3月4日 8時0分

AMD、アップル、テスラを渡り歩いてきた天才エンジニアのジム・ケラー氏(撮影:今井康一)

メタのザッカーバーグCEOが岸田文雄首相と面会した2月27日。もう一人のハイテク界の大物が東京にいた。半導体業界の伝説的なエンジニア、ジム・ケラー氏だ。

AMD時代に圧倒的なコスパのCPU(中央演算処理装置)で黄金期のインテルに対抗し、倒産目前だった自社を救ったのは産業史に残る逸話だ。アップル、テスラでも独自半導体の開発を率い、「シリコンの魔法使い」とまで呼ばれる。現在はカナダのスタートアップ・テンストレントのCEOとしてAI用半導体を開発するケラー氏。エヌビディアが独占するAI半導体市場に、魔法使いはどう挑むのか?

だからエヌビディアは強い

――過去40年以上、そうそうたる企業で半導体を開発してきました。半導体産業を深く知るあなたから見て、今の業界王者であるエヌビディアの強さとは?

【ラピダスとも提携】1月27日の会見でラピダスの小池淳義社長と登壇したジム・ケラー氏

AIがもたらす半導体需要の「先行者利益」をつかんだことだ。ではなぜ先行者になれたのか? 技術的にはいろいろあるが、詰まるところは創業者ジェンスン・フアンの手腕だ。

私はテスラにいた当時、ジェンスンと何度か会っている。テスラはエヌビディアの顧客だからね。彼は頭が良く、そして挑戦心が旺盛な人間だ。彼の挑戦はつねに成功したわけじゃない。モバイル用のチップはうまくいかなかった。モデムチップへの投資も失敗した。ゲーム機もだめだった。

そういう数々の挑戦の一つが、高速コンピューター(HPC)用のGPU(画像処理装置)だった。

今でこそAI需要でHPC用の半導体は急成長しているが、彼が投資し始めた当時はこの市場がここまで大きくなるとは誰も思っていなかった。「GPUをHPCに使うなんて時間の無駄」という外部の声にジェンスンが耳を傾けていたら、エヌビディアが先行者利益を得ることはなかった。

エヌビディアの1.9兆ドル(約285兆円)という時価総額は、ある種の幸運の結果だとしても、HPC市場での成功は決して偶然の結果じゃない。

「顧客は自分が何を欲しいのかを知らない」と言ったのはスティーブ・ジョブズだったが、ジェンスンがCUDA(GPUを使いやすくする開発環境ソフト)を導入したのはまさしく、顧客がそれを欲しがったからじゃない。GPUを使ったHPCは伸びると彼自身が顧客より先に確信し、そのために何が必要かを見極めたからだ。

今後10年、AIは飽和しない

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