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「伝説のエンジニア」が明かすエヌビディアの死角 ラピダスや孫正義氏の半導体戦略はどう見る?

東洋経済オンライン / 2024年3月4日 8時0分

私たちは半導体の製造委託先としてまずグローバル・ファウンドリーズを選んだ。来月にはTSMCを使う。その次はサムスン電子で、さらにその先にラピダスで生産する予定だ。

私が知る限り、ラピダスは他よりもスピード重視のファウンドリー(製造受託企業)だ。それが気に入った。市場が急速に変化しているときは、設計から製造までのスピードが重要だからだ。ラピダスがうまくいくことを私は祈っている。

ただ懸念は、TSMCと同じようなことをしようとしないか、ということだ。ラピダスは2ナノメートル世代の先端ラインを建設するというが、それは良くもあり悪くもある。相手と同じことをする限り、予想以上の大きな成功は起こり得ない。

――ラピダスが誕生した背景でもありますが、日本やアメリカなど各国政府は巨額補助金を支出し、半導体産業の振興に乗り出しています。

補助金のおかげで資金不安が減り、成長する企業もあるだろう。だが同時に、補助金をもらうことばかり考え、進歩しなくなる企業もある。

私はアメリカの複数の議員とCHIPS法(アメリカ国内の半導体産業に関する政策)について議論をした際、「産業全体を振興したいなら、インテルやアップル、TSMCのような大企業におカネを与えるだけではダメだ」と指摘した。新しい技術は、新しい企業が生むのだから。

歴史が教えてくれるのは、政府の産業振興策は役に立つこともあれば、そうでない場合もあるということだ。アメリカは自由貿易協定によって多くの雇用を失ったが、その割に自動車の価格は期待通りに下がりはしなかった。政策の効果は複雑であり、予測不可能だ。

制裁が中国を強くする

――アメリカは自国産業を振興しつつ、対立する中国には半導体設備の禁輸制裁をしています。この影響は?

実のところ中国にはすでに、オランダのASML(半導体設備最大手)のコピー製品を作れる地場企業が出現しており、目覚ましい業績を叩き出している。

現実としては、制裁は中国が産業における自立性を高めるきっかけになっている。同じようなことは、今まで何度も起こってきた。

――米中対立という地政学要素が世界の半導体投資を加速させています。地政学要素は企業家にとってリスクですか、好機ですか。

今、半導体への投資が活気を帯びているのは、技術の進歩と需要があるからで、地政学的対立は一つの要素にすぎない。もしある国が自国に優れた半導体企業を望むなら、補助金と制裁だけでは不十分だ。起業しやすい制度があり、新興企業に投資する有力なベンチャーキャピタルがあること。そういった複数の要素があってこそのことだ。

杉本 りうこ:フリージャーナリスト

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