中国で「空前の整形ブーム」が起きているなぜ 今後の消費のカギを握る「中女」とは何か
東洋経済オンライン / 2024年3月6日 11時30分
5年ぶりに北京に帰省し、家族と春節を過ごしたが、故郷で一番驚いたのは、街中雨後の筍のように出現してきた美容整形のクリニックの存在だ。
【写真】暗闇の中で煌々と輝く美容整形外科、北京にはこうした病院が急激に増えている
日本駐中国大使館も近い一等地中の一等地、東三環を通ると、昔、高級ホテルやレストランだったところに、「〇〇整形医院」「〇〇医療美容医院(医美)」(中国では整形医院は美容整形を指す)と看板を掲げた、現代感と高級感にあふれる建物がよく目に入ってくる。
北京滞在中15人の20代から40代の富裕層の方々にインタビューしたが、そのときにも、「東京の信頼できる美容整形クリニックを紹介してほしい」と何人からも頼まれるほど、彼女たちの美に対する関心は高い。
外見にまつわる消費が旺盛なのは、中国の社会の変化、そして新しい消費者層の誕生を表している。本稿では、中国美容整形市場の現状から、今後の消費の主力となる「中女(オトナ女性)」の価値観と好みをご紹介したい。
美容整形市場は急拡大中
アメリカ・韓国などの先進国の美容整形市場がすでに成熟しているのに対し、中国の美容整形市場は未熟なところは多いが、ポテンシャルが非常に大きい。
デロイトの調査によると、2015~2020年中国の美容整形市場の規模は637億元から1550億元に急成長し、2025年に3500億元(約7兆円、全世界のスマホゲーム市場と匹敵)も超えると推測されている。
2019年の1000人当たりの美容整形の数を見ると、日本は27回、アメリカは52回、そして韓国の86回に対し、中国大陸は17回しかない。また、アイドルの影響もあり、男性の美容意識も高まっていることや、北京・上海などだけでなく、2線、3線都市でも美容への関心が高まっていることなどから、今後のポテンシャルが非常に大きいといえる。
一方、中国の特徴としてあげられるのが、「メスを入れる」整形よりも、レーザー治療や、ヒアルロン酸など注射など身体への負担が小さく、リスクが低めの「プチ整形」が好まれている点だろう。
「見た目も心を表わす」からキレイになりたい
過去の記事でもよく紹介しているが、中国では世代間の格差が非常に大きい。特に1950~60年代生まれた親世代と、1980~90年代に生まれた子世代の間に、雲泥の差といってもよいほど、価値観・消費観の違いがある。
親世代は中国伝統思想に大きく影響され、「身体髪膚、授之父母(身体の全部は親からもらったもので動かしてはいけない)」「自然が一番、化粧品には化学成分があるので身体に悪い」「お化粧や見た目を重視する人は心が空っぽ」など、自然美が一番と考えられ、「外見美」に関する消費意欲が低い。
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