血糖値高めを放置し「足を切断した」男性の言い訳 糖尿病を甘く見てはいけない、これだけの理由
東洋経済オンライン / 2024年3月10日 11時0分
糖尿病は放置しておくと、さまざまな合併症を引き起こします。その代表的なものが糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症で、「3大合併症」と呼ばれています。
糖尿病によって動脈硬化が進行すると、足先の血液循環が悪くなり、足の組織が壊死して、壊疽(組織が腐って死ぬこと)を起こしてしまうことがあります。
通常は、壊死するまでの段階でかなりの痛みを伴うため、早い段階で気づいて治療できることが多いのですが、糖尿病の場合は神経障害が起こっているので痛みを感じにくく、進行するまで気づかないことが少なくありません。
このほかにも神経障害ではさまざまな問題が起こります。
例えば、運動神経が障害されると、足先が垂れて歩きにくくなるなどの症状が表れます。また知覚神経が障害されると、チクチクとした不快な痛みに悩まされたり、逆に痛みや寒冷を感じにくくなり、火傷を起こしても気づかなかったりします。
こうした本人が気づかない小さな傷や火傷をきっかけに、壊疽が始まる例もめずらしくありません。
自律神経に障害が起これば、立ちくらみや発汗異常、下痢や便秘、消化吸収の異常、排尿異常などを起こします。
そしてAさんを恐れさせた失明、つまり糖尿病網膜症は、日本人の失明原因の上位になっている疾患です。目の網膜の毛細血管が詰まるのが原因ですが、こちらも自覚症状がないうちに進行し、症状が表れたときには、すでに失明の危機に瀕した状態であることが多いのです。
Aさんは、血糖値が高い状態が長年続いているにもかかわらず、生活習慣を変えることなく過ごし続けたことで糖尿病が進行し、こうした合併症を次々と引き起こしていました。
私は足の切断手術の後、Aさんが退院して自宅で生活を送り始めたときから、在宅医として関わり始めました。糖尿病がこれ以上悪化しないよう、看護師と一緒に生活習慣の改善や生活維持のサポートをしたり、薬を調整したり。そんなことを続けながら、数年が経ちます。
そんなAさんからは、「あのとき、誰かが教えてくれたら、こうならなかったのに……」という後悔の言葉が、たびたびこぼれます。
しかし、健診のたびに「血糖値が高いので、日頃の生活習慣に気をつけましょう」と言われてきたはずです。
同世代の友人や元同僚のなかには、元気に老後の生活を楽しんでいる人がたくさんいるようです。50代半ばで脳梗塞となってまひが残り、足まで切断したAさん。思い描いていた人生の過ごし方ができなくなったことへの後悔が、年を重ねるにつれ、骨身に沁みているように見えました。
糖尿病は「怖い病気」
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