経済学者が間違い続けた年金理解は矯正可能か Q&Aで考える「公的年金保険の過去と未来」(上)
東洋経済オンライン / 2024年3月13日 8時0分
『週刊年金実務』という、年金界のできごとを毎週まとめて届けてくれる雑誌がある。福祉元年と呼ばれる1973年、公的年金に物価スライド制、賃金再評価という年金の成熟を加速する仕組みが導入された年に、刊行されている。このたび50周年記念として「年金制度のこれまでとこれから、10人にきく」という企画が立ち上げられた。そこに書いた文章に加筆し、東洋経済編集部の協力を得てQ&A方式で上編、中編、下編に分けて記事を構成した。
今回の上編では、世界的には評価が高い日本の公的年金が、なぜ国内では国民からの不信が強いのか、その背景と不信の構造を生み出す「主役たち」にスポットを当てている。
まだ国民共通の理解が欠ける公的年金
──日本の公的年金保険のこれまでと現状をどのように評価するか。
まず、公的年金という制度が何をやっているのかについて共通の理解が必要だ。
その年に生み出された付加価値(財・サービス)を、所得という形で、継続的に収入の途絶している人に渡して、彼らの財・サービス消費を支えるのが年金だ。年金受給者の財・サービスの取り分を増やすためには、同じ時間を生きるそれ以外の人たちの取り分を減らす必要がある。こうしたゼロ・サム問題を扱う領域は、経済学の中では、分配、再分配問題と呼ばれ、プラス・サムの関係を築く余地がある領域を生産問題と呼ぶ。
基礎年金の保険料拠出期間を40年から45年にするという制度改革案の話も、その年に生み出された付加価値のうち、基礎年金の取り分を40分の45(1.125倍)倍に増やすという分配の話だ。
いま現役期の人もいずれは高齢期に入り年金受給者になる。自分の高齢期の生活を今の制度で想定されているよりも豊かにするために、多くの人がまだ働いている65歳までの自分の現役期と高齢期の所得の分配を見直してはどうだろうか――問われていることは、そういう話だ(なお、厚生年金に入っている場合、今でも18.3%(労使折半)の保険料率で70歳になるまで被保険者でいることができるが、給付額の半分は国庫負担である基礎年金への拠出期間は40年が上限。それ以降は、報酬比例部分<国庫負担なし>のみへの拠出となる)。
年金の世界で”支え手を増やす”という言葉は意味がなく、長く、多く保険料を払ったら、自分の年金が増える。ただそれだけのことだから、年金の世界で“支え手を増やす”という言葉は使わないことだ。
もっとも、生産よりも分配のほうがはるかに政治的調整の難易度が高く、再分配制度である公的年金保険の構築はこれまで最難関の課題であったであろう。2022年12月、韓国の厚労次官・年金局グループが訪ねてきて、彼らは、既裁定年金(すでに年金を受け取っている高齢者たちの年金)をも給付調整の対象とし、支給開始年齢の引き上げを死語(無意味)とした2004年改革をどうして実現できたのかと、私を含めていろんなところで聞いていた。
この記事に関連するニュース
-
2024年10月から「パートの働き方」が大きく変わる!?現在の働き方を見直す4つのポイントとは
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月13日 1時40分
-
【年金財政検証】年金破綻論に騙されるな!個人投資家は、将来の年金をどれくらい織り込むべきか
トウシル / 2024年7月6日 11時0分
-
年金問題の正しい見方:【年金財政検証】で投資家がミスリードしてはいけないこと
トウシル / 2024年7月6日 11時0分
-
年金破綻は〈全くない〉が…「少なすぎる受給額」で露わになる「働く日本人の恐ろしい老後」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月1日 20時30分
-
父の年金額が「25万円」と聞いて驚き! 私の月給と「同じ額」なのですが、どれだけ稼げば25万円も受け取れるのでしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月27日 2時20分
ランキング
-
1貯金ゼロの貧乏ママが“資産1億円”を達成するまで。1日14時間以上の勤務に疲れ果て「これは続けられない」
日刊SPA! / 2024年7月17日 8時52分
-
2「石丸伸二を支持する人」の熱が冷めてきた事情 小泉純・橋下両氏に並ぶ「SNS時代」のトリックスター
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 8時40分
-
3近隣住民にクラクションや大声440回、PTSD発症させる…男を傷害容疑で再逮捕
読売新聞 / 2024年7月17日 6時34分
-
4取り調べ中に紙を丸めてくしゃくしゃに サーカス団長を容疑で逮捕 「信号無視の弁解録取書を見てストレスに」
ABCニュース / 2024年7月17日 9時58分
-
5長野県の黒川ダムに車転落、女子学生が死亡…救助に飛び込んだ学校職員が行方不明
読売新聞 / 2024年7月17日 15時4分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください