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コスパ重視、職場で「ファスト・スキル」求める若者 働く若者が抱える「挑戦と保身」のジレンマ

東洋経済オンライン / 2024年3月13日 15時0分

「いや、特にまだ目標とかは決めてないんですけど、現時点で何かおすすめの資格とかがあればと思いました」

言い方は若者らしく、たどたどしいが、言葉づかいは丁寧だ。僕以外の多くの教員は、ここでいくつかの資格をあげるなど、何らかの回答をしてくれる。人によっては、自分の体験なども交えて話したりして、とても素晴らしい。

ただ、僕は原則を記憶に留めてもらうよう努める。資格はあなた自身の能力のほんの一部の証明に過ぎない。資格自体が決定的な武器になる時代ではない。少なくとも、資格が取れそうだから、という理由だけで進学先を選ばないでほしい。

結果的に突き放す言い方になるから、質問した新入生は少し苦い顔をする。それを見ながら話す僕のメンタルも、少し削られる。

ストーリーはここで終わりではない。むしろ、ショックだったのはここからだ。僕の返答は、つまるところ「資格は活用するあなた次第」ということだ。

ちなみに、こういった対談イベントや座談会には、アンケートが付き物だ。そこには、追加で訊きたいこと、なんていう項目もある。そこにこう書かれていたことがあった。

「資格は目標次第というお話、ありがとうございました。では、どういった目標のときに、どういった資格が有効か、わかるような一覧表や解説書があれば教えてほしいです」

マジか、今の若者よ。

と、苦笑いすることは簡単だ。だが、若者がそう思うようになった原因は何か。誰のせいか。それを考えると、ちょっと怖くなる。

あくまでもこの世を効率的に生きる上で有効なテンプレートを1つでも多く欲しがる若者たち。それを得ることで、なるべく少ない努力で、周りと同等か、そのやや上の安定した生活を得ることを意識している。

若者が求める「ファスト・スキル」とは何か?

2022年9月にレジー著『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』(集英社新書)という本が出版され、若者を中心とした教養の取得に対するファスト化が話題となった。

簡単に言うと、手っ取り早く仕事に役立つ教養を身につけたいという若者が増えている、という主張で、僕も全く同感だ。

入門書や専門書を何冊も読んだり、大学の講義に参加したりすることは、コスト負担が大きいし、効率も悪い。それだったら、「〇分でわかる□△解説」といった動画はたくさんあるし、何なら詳しい人にさっと教えてもらえれば十分、という考えが強くなっている。

こういった、いわゆるコスパやタイパを計算した行動が目につくようになった。

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