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コスパ重視、職場で「ファスト・スキル」求める若者 働く若者が抱える「挑戦と保身」のジレンマ

東洋経済オンライン / 2024年3月13日 15時0分

僕は、ファスト化の対象は教養だけではなく、スキルや能力にまで及んでいると考えている。そして今の若者の多くは、それらが得られる機会は会社側から提供されてしかるべきであって、それがない会社は良くない会社と考える、というのが僕の主張だ。

仮に若手に与える仕事を、誰にでもできるような作業に限ってしまえば、身を切られるようなストレスを感じることはないし、彼らから「理不尽だ」、「ブラックだ」、「搾取だ」と訴えられるような状況にはならない。

少なくとも着任初期の若手の定着率は上がるかもしれない。それだけなら、とにかく若手を大事にしたい上司や会社にとっては一安心だろう。

不安や危惧を覚える若者も

ただし、そのような職場環境に身を置くと、新たな仕事に対する知識やスキルが身につかないのは明白だ。一部の若者は、ここに不安や危惧を覚える傾向にある。

仕事にも会社にも「ファスト・スキル」の獲得機会を求めるこの点は、実際にパーソル総合研究所「働く10,000人成長実態調査2022:20代社員の就業意識変化に着目した分析:過去6年間の変化からみる2022年の20代社員像」でも、以下のように指摘されている。

20代前半正社員の仕事選びの重視点は、休みの取りやすさ、人間関係、収入などが減少する一方で、社会貢献や、知識・スキルが得られるといった「自己成長」に関する項目が上昇傾向。今後のキャリア形成を考えて、自身を成長させてくれる会社を選びたいという意向が強まっていることがうかがえる。

ここでも、やはりポイントは「ファスト・スキル」にあると考えている。

今の若者の多くは、成長を実感したい、職業人として通用する能力を身につけたい、という気持ちは確かに強い。

かといって、批判が飛び交うような職場や、がむしゃらに働かなければならないような業務を求めているわけではない。じっくり3年、5年とかけて身につけるような職人的下積みも、求めているわけではない。

要するに、今の若者の多くは、なるべく手軽に成長を実感したい、周りに遅れないよう効率的に職業人として通用する能力を身につけたい、という気持ちが強い。これが正確な表現だろう。

だからスキルや能力向上の機会を無視してこき使う職場を「ブラック」、逆に仕事量が少なく、身につく知識やスキルが少ないと感じる職場を「ゆるブラック」と評することになる。

矛盾を内包して生きる若者たち

また、「仕事でバリバリ稼ぎたい」、「やりがいを持って働きたい」というポジティブな理由ではなく、「日本の経済成長は見込めないから、若いうちからスキルや経験を求めなければ生き残れない」という、日本経済に対する期待感の低さも影響しているのでは? と考える人も多い。

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