「老後ひとり暮らし」心を病む人病まない人の差 自分の思うままに生きる「スナフキン」に学ぶ
東洋経済オンライン / 2024年3月13日 6時40分
老後のひとり暮らしを謳歌している人はたくさんいます。しかし中には、定年退職で職場を離れたり、配偶者に先立たれたりして、喪失感を抱えてしまう人も少なくないでしょう(写真:Fast&Slow/PIXTA)
正敏
【画像】OECD諸国の中で「人付き合いが滅多にない」と答えた人の割合がもっとも多かったのが日本だった
誰にも干渉されない老後のひとり暮らしを謳歌している人はたくさんいます。しかし中には、定年退職で職場という居場所を離れたり、長く連れ添った配偶者に先立たれたりして、喪失感を抱えてしまう人も少なくないでしょう。とはいえ、新しい人間関係を築くのも億劫なもの。
孤独も悪くないけれども、孤立してしまうことにはリスクがある。そう語るのは生前整理や遺品整理で何千軒というひとり暮らしの家を見てきた山村秀炯さん。近著『老後ひとり暮らしの壁』の中から、一部を抜粋・再編集して紹介します。
孤独と孤立は違う
『ムーミン』シリーズに登場するスナフキンをご存知でしょうか。彼は孤独を愛しています。他人に干渉されることなく、自分の思うままに生きる。おひとりさまの達人です。
スナフキンのようなキャラクターは、他の作品でもときおり見られます。孤独というのは人によっては価値のあるもので、彼らに憧れたり共感したりする人も少なくないということでしょう。
たしかに、人間関係はときに大きなストレスの原因になります。
私の友人の阿久津さん(仮名)も60歳を過ぎてから「お互いに気を遣うくらいなら」と離婚しました。
ただし、注意しなければならないことがあります。孤独と孤立は違うということです。孤独は〝感覚〞であり、孤立は他者と切り離された〝状態〞です。
スナフキンは孤独が好きですが、友人であるムーミン一家との関わりは描かれています。阿久津さんもゴルフ仲間や私のような友人がたくさんいます。彼らはひとりの時間を大切にしながらも、決して孤立はしていないのです。
フランスの作家バルザックは「孤独は良いものだと認めざるを得ない。しかし、孤独は良いものだと話し合える相手がいることも、一つの喜びだ」と書いています。
実は、日本は社会的孤立に陥りやすい国です。過去に行われた調査では、OECD諸国の中で、人付き合いが滅多にないと答えた人の割合がもっとも多かったのが日本でした(「Society at a Glance」2005年)。
これは、人との関わりがなくてもある程度は生活できるという、日本社会の成熟を示しているのかもしれません。
しかし歳をとれば、話し相手や相談相手、身元を保証してくれる人、日常生活の世話や介護を頼める人、死後の手続きを頼める人など、セーフティネットとして必要な人間関係というのが出てきます。
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