「倍速消費」並みになった合意形成のスピード感 政策が次々と「検討なく」決められている理由
東洋経済オンライン / 2024年3月14日 9時30分
つまり民主政治を、〈期間限定の独裁支配〉の繰り返しのごとく見なす傾向が強まったのです。「選挙で選ばれたんだから、リーダーは好き放題にやって構わない。不満があれば、次の選挙で追っ払えばいいんだ」というアレですよ。しかしこれでは、合意形成も何もあったものではない。
佐藤:政治は結果がすべてです。経世済民が達成されるのであれば、期間限定の独裁であろうと、いちがいに否定はできません。けれども、平成日本はいかなる結果を出したか。うまく機能していたシステムをぶち壊して、貧困化と格差拡大をもたらすシステムに置き換えるという、惨憺たる結果を出して終わったのです。
平成以後に自由民主主義の否定が進行した
『新自由主義と脱成長をもうやめる』でも議論されたように、自由民主主義の社会には本来、いろいろな中間団体があって、意見調整、すなわち根回しを行う。これによって合意の基盤が形成されてゆくのです。だからこそ、最後の多数決で負けたとしても、システム自体への信頼は揺るがない。
その意味で平成以後、わが国では自由民主主義の否定が進行したと言えるでしょう。そして今や、社会的合意形成の努力を政治がいよいよ放棄した感が強い。「この政策をやるんだ」と決めたら最後、問題点や弊害をいかに指摘されようが、反対の世論が強かろうが、意地になって強行するということです。
かつてなら、反対や批判の多い政策については、いったん撤回、ないし凍結したうえで、根回しや練り直しに努めるのが当たり前でした。例えば消費税も、最初に話が持ち上がってから、導入が決まるまでに10年かかっている。その間、お蔵入りにしたり、税の名称を変えてみたり、税率をいじったりと、いろいろ紆余曲折がありました。
しかるに現在はどうか。健康保険証の廃止、インボイス制度の導入、あるいは万博開催をめぐる政府の姿勢は、「やると決めたんだから、何が何でもやるんだ」という頑迷なものにしか見えません。SNSで批判されるや、すぐ相手をブロックするので有名になった大臣までいるくらいです。
要するにイヤなことは聞きたくないわけですが、これで物事がうまく行くはずがない。マイナ保険証の利用率は、2月末の時点で全国平均4.6%、最も低い沖縄に至っては2.3%にとどまっています。インボイス制度にしても、物価高による国民生活の圧迫が論じられているさなかに導入するという支離滅裂ぶり。あれは増税と同じ効果があるのですから、まともに考えれば中止か、少なくとも延期して当然でしょう。
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