「倍速消費」並みになった合意形成のスピード感 政策が次々と「検討なく」決められている理由
東洋経済オンライン / 2024年3月14日 9時30分
もとより経世済民にマイナスであっても、それで支持率が上がる、つまり政権運営が容易になるというのなら、メチャクチャな政策を強行するのも理解できなくはない。実際、そういう破壊主義的なリーダーが国民の喝采を浴びた時期もありました。
けれども岸田内閣はみごとに不人気。ヤケになったあげく、自滅的に暴走する「無敵」の状態に陥っているとまで評されるありさまです。かつて小泉純一郎総理は、「古い自民党をぶっ壊す」と宣言しましたが、岸田総理は「自民党を完全にぶっ壊す」ところまで行くかもしれません。
行動を根本から変えねばならないのは明らかなんですよ。ところが、それができない。リーダーシップにたいする考え方、リーダーシップ自体の概念が大きく狂ってしまったからです。有名なアニメの主題歌をもじれば「思い込んだら自滅の道を、行くが政治のド根性」、そんな錯覚が定着したと言わねばなりません。
佐藤:政治が社会的合意形成を放棄すると、国はどういうことになるか。まずインフラ整備など、本当に重要な政策は実行されません。そのような政策は多大なリソースを必要とするのが常ですから、根回しをせずにやれるはずがないのです。
だとしても「われわれはやるべきことをやらずに、いい加減にごまかしている」と自覚するのはツラい。こうして社会には、ある風潮が台頭するに至ります。「社会的合意が必要なことは、そもそもやらなくていいんだ」という開き直りの風潮です。
復興の放棄は安全保障の放棄だ
2024年は能登半島地震で始まったわけですが、その直後、「過疎地域の復興はコスパが悪いから、被災者には集団移住してもらうべきだ」という趣旨の主張を公言する政治家が現れました。要するに復興の放棄を提唱したのですが、ならば過疎地域で災害が発生するたびに、わが国は実質的に縮小してゆくことになる。
これを肯定する政治家が、自国の領土を守ろうとするはずはありません。復興の放棄とは安全保障の放棄であり、ずばり自滅への道なのです。
ちなみに、この手の開き直りを正当化する便利な言葉があります。すなわち「過剰」。過剰とは本来「必要な程度を超えている」「多すぎる」という意味ですから、過剰なことはやらなくてもいい、もしくはやらないほうがいいと主張できる。ところが最近では、「過剰」を「コスパが悪い」という意味で使う人が増えているんですよ。
世の中、コスパが悪くても必要なものはありますので、この用法は正しくありません。「コスパが悪いものは過剰で、ゆえに不要」などという話になったら、そもそも社会的インフラの整備などできないのです。裏を返せば、インフラ整備の放棄を正当化するには「過剰」を不適切な意味合いで使うのが手っ取り早い。あまつさえ「コスパが悪い」を、「自分の気に入らない」という意味で使う傾向すら見られる。
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