「倍速消費」並みになった合意形成のスピード感 政策が次々と「検討なく」決められている理由
東洋経済オンライン / 2024年3月14日 9時30分
その少し前にも安倍さんは、自分にヤジを飛ばした人々を指して「こんな人たちに私は負けない!」と叫んで物議を醸しました。一国の首相が、同じ日本国民に対して、いくらなんでも「こんな人たち」はないだろうと批判されたわけです。
つまり、もはやいまの政治家は、自分に反対する人々を、同胞や仲間とは思わず、たんに「敵」としてしか見なさないようになってしまっているように思います。そうなると、政治は「全体の利益」や「公共の利益」ではなく、もっぱら特定の階級的利益に奉仕するものでしかなくなってしまいます。
他方、施さんがおっしゃった、リベラル派の学者たちが一般大衆に呼びかけなくなってしまったという問題も、このナショナリズムの放棄という問題と関連しています。
例えば、最近の事例でいうと、昨年12月に国立大学法人法が改正されました。これなども、大学の外部に意思決定機関をつくって、そこからトップダウンで新自由主義的な大学改革を断行しようとするもので、しかも、当の国立大学協会等にさえほとんど何の相談もなく、ろくな議論もしないまま、わずか3か月足らずで強権的に法案を成立させてしまいました。
これに対して、リベラル派の学者たちは当然、反対運動をしました。しかし、たぶん一般の大衆のほとんどは、そんな問題があったことさえ知らないでしょうし、知っても自分には関係のないことだと思ったでしょう。というのは、学者たちが言っていたのは、もっぱら「民主主義を守れ」「大学の自治を守れ」「学問の自由を守れ」という、普遍的な理念ばかりです。確かに、言っていること自体は正しいのですが、それでは一般の人々には届かないでしょう。
古川:そうではなくて、この「大学改革」がどう国益を損なうのか。そういうナショナルな問題として語らなければ、文字どおり国民的な問題にはなりません。しかし、彼らはそういう語り方をしない。それは、ナショナリズムに立脚することを、彼らが嫌がっているからだと思います。自分をナショナリストだとは思いたくないし、思われたくないんですね。
こうして結局、右も左も、ナショナリズムを放棄しているんです。その結果が、現在のような合意形成を放棄する政治なのだと思います。
目標設定者が永久免責される「日本型PDCA」
佐藤:施さんのお話で興味深いのは、各国の国家目標が「外部の存在」によって決定されるという箇所です。われわれの世界は主権国家によって構成される以上、全ての国の外部に位置しているのであれば、多国籍企業は世界そのものの外側、「どこでもないどこか」に存在することになる。
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