AI社会では「文系・理系」の融合こそ喫緊の課題 専門課程後に「教養教育」を大学で学ぶべき理由
東洋経済オンライン / 2024年3月15日 10時40分
現在、学校のみならずビジネス社会においても「教養」がブームとなっている。そもそも「教養」とは何か。なぜ「教養」が必要なのか。
前回に続き、3万5000部のベストセラー『読書大全』の著者・堀内勉氏が、東大教授でAI研究の第一人者である松尾豊氏に「進化するAIと教養」をテーマに、「教養とは何か」「人はなぜ学ぶのか」についてインタビューを行った。
「文系・理系」分離の問題点
堀内:私も松尾さんもお互いに大学の教員でもありますが、いまの大学の教養教育について、どのように感じているでしょうか。東大の場合は他大学とは少し違っていて、1年生は全員が駒場の教養学部に入って、3年生から本郷と駒場に分かれて専門課程に入っていく。その中で、3、4年生でも教養学部という専門課程を選択できるという独特なシステムになっています。
松尾:もちろん専門をきちんと選ぶために視野を広げるという意味で、教養学部はあってもよいのですが、学ぶ順序が逆で、専門課程のあとに教養を学ぶほうがよいのかもしれません。専門の知識を持った後であれば、自身の専門と異なる世界や別の見方や考え方について学ぶことは、より意義があることになる。とりわけリーダーになるような人に教養教育は必修にすべきと言ってもよいでしょう。
現在の日本の大学の多くが1、2年生で教養を学ぶコースになっていますが、それだとどうしてもお勉強っぽくなってしまいます。社会に役立てるという意味では、博士課程を終えたあとくらいに、博士課程に進んでいない人も20代の後半くらいに、もう一度、教養的なものを学ぶべきだと考えます。
堀内:松尾さんは、ご自身が教養教育に関わろうというお気持ちはあるのでしょうか。
松尾:いま時点では、具体的にはないのですが、私の研究室でスタートアップ事業を行っていて、社会で何を目指すのかということについてきちんとした見識や考え方を持つ必要性は痛感しています。そこがしっかりしていないと、経済的な成功に満足して、そこで終わってしまうからです。
堀内:今の教育論の中で、「文系ってそもそも何なんだ」という議論があります。文系だからテクノロジーのことは知らなくても構わない、数学や物理や化学は学ばなくても構わないんだということでよいのかという声があがっています。
松尾:文系・理系に関しては持論があります。以前、リクルート社が行っている「スタディ・サプリ」と共同研究を行ったことがあるのですが、生徒がどのように学んでいるかをオンラインのログで分析したところ、勉強ができる子――「メタ認知学習者」と呼んでいましたが――は、自分が何をわかっていないかがわかるので、復習するときにピンポイントのその場所に飛べるのですね。そうすると、とても学習の効率が良く、それをシステムとしてサポートするということを行っていました。
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