1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

AI社会では「文系・理系」の融合こそ喫緊の課題 専門課程後に「教養教育」を大学で学ぶべき理由

東洋経済オンライン / 2024年3月15日 10時40分

さらに、自分という概念をもう少し拡張して考えていくと、自分を取り巻く環境、それを社会または世界と呼んでもよいですが、自分を含むもっと大きな範囲がどのようにより良い姿になっていくのか……そういったことを考える一つの手段が教養だと思っています。松尾さんは教養と社会の関係をどのように考えていますか。

松尾:私は、リーダーが意思決定するために必要なものが教養だと思っていますので、そういう意味では、教養とは実践知に近いもので、そこから離れてしまうとただの物知りということになってしまいます。やはり、いまの時代に大事な意思決定をしていくためには、ものごとの見方を広げ、歴史や他人の経験から学ぶ必要性がある。そこからもう少し広げて、そういった意思決定も含めて、自分の生き方をより善くするためにも教養が必要ということになると思います。

堀内:さきほどお尋ねした、個人とそれを取り巻く社会との関係についてはどう捉えていますでしょうか。たとえば、自分と日本という国を完全に同一視してしまって、日本がサッカーの試合に勝てばそれだけで幸せ、相手の国のことなんかどうでもよいみたいな人たちもいます。また、自分の幸せはどこにあるのかよくわからなくて、会社と自分のアイデンティティを一体化してしまうような人もいます。このような極端な例は別にしても、そうはいってもやはり社会が良くならなければ、自分だって幸せにはなれないという考えもあると思います。

松尾:先日、堀内さんがお住まいの軽井沢にうかがった際に、このような高尚な議論をしている堀内さんが、最近建てた高級別荘をいくらで売ろうと思っているとか、シンガポールの富裕層にだったら何億円くらいで売れるとかいう話を真剣にされていて、大変面白いなと感じました。地に足がついているというか。

私の研究についても、研究の成果を社会に還元する世俗的な部分と、それをもっと俯瞰して社会全体をより良くしていくという両面がないといけないと思っています。抽象論や高尚な議論ばかりしていても視野が狭い人間になってしまうので、自分と社会についても「多層的」な関わりを持つことが大切です。教養は広く社会の全体を捉えるうえで重要であり、それが日常的な活動の方向を示すものになっていくのでしょう。

堀内:メタ認知ということも含めて、多面的・多層的にものを見る力、ということですね。

松尾:同時に実践のほうも多面的・多層的なほうが良いと考えています。おそらく同じ職場でずっと勤めている人は多面的・多層的ではないので、教養だけ身につけても活かす場が少ないのかもしれません。

リーダーになる人にこそ教養が必要

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください