天才「ガンディーニ」シャイな彼が残した遺言 ミウラやカウンタックを生んだデザイン哲学
東洋経済オンライン / 2024年3月15日 12時30分
マルチェッロ・ガンディーニが亡くなった。3月13日、享年85であった。スーパーカーの世界における“神”とも称される彼の死去に、世界中のファンからたくさんのお悔やみのコメントが寄せられている。
なんと言っても、彼はスーパーカーブームの立役者たる1台、ランボルギーニ「カウンタック」のスタイリングを描いた、いわば生みの親である。それだけでない。元祖スーパーカーたる、ランボルギーニ「ミウラ」も彼の作品なのだ。
自動車デザインの経験ゼロで抜擢
ミウラは、1966年に発表された世界初の市販大排気量ミッドマウントエンジン・スポーツカーだ。ミッドマウントエンジンがレースカーに採用され、ル・マン24時間レースを制覇したフォード「GT(40)」が大きく注目される中で、ジャンパオロ・ダラーラ、故パオロ・スタンツァーニという若きエンジニアたちとともに、これまた20代の若きガンディーニが手がけた傑作だ。
彼は、カロッツェリア・ベルトーネにジョルジェット・ジウジアーロの後釜として在籍し、オーナーである故・ヌッチオ・ベルトーネと、このランボルギーニのニューモデルを手がけたのだ。
実はガンディーニにとって、ゼロからクルマのスタイリングを手がけたのは、このミウラが初めてのことであった。ヌッチオは彼の才能を見抜いてのことであろうが、そんな若者に社運をかけたモデルの開発を託すというのも、大した度胸だ。
果たして、彼は古典的なスポーツカーの要素に、未来的なベルトーネの要素を加味した美しいミウラのスタイリングが完成させた。
大型エンジンがシートの後ろに位置するミッドマウントエンジンレイアウトであるが、それまで主流であったフロントエンジン・スポーツカーを見慣れた目にも違和感のない、絶妙な筆加減であった。ミウラは大ヒットし、まだ歴史の浅いランボルギーニの名を世界に轟かせる重要な役割を果たした。
不可能を可能に変えたエピソード
ガンディーニは、オーケストラ指揮者の父の元に生まれた。フリーランスのデザイナーとして生計を立てていたが、自動車開発に関する専門的な教育を受けたことはない。しかし、彼はデザインの才能はもちろんであるが、エンジニアとしての深い知識をも持ち合わせていた。
彼とともに、ミウラ、そしてカウンタックの開発をランボルギーニのエンジニアとして行ったパオロ・スタンツァーニはこう語った。
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