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「唯一無二の量産型」という矛盾を内包する若者 リスクを負わず自分を差別化したい若者の生存戦略

東洋経済オンライン / 2024年3月17日 14時0分

仮にその手土産を個包装されたバターサンドだとしよう。ホールケーキやバームクーヘンだと切り分けるのが大変だろうからと、優しいMさんは気を使ってくれた。それでもなお、③の出現頻度は変わらない。それはなぜか。

それは、今の大学生が傍若無人な無礼者でも、常識知らずなわけでもない。学生のバターサンドに対するリアクションが薄い理由、それは「自分が代表して受け取ることが怖い」からだ。

誤解を恐れず、ストレートに表現しよう。この状況において、バターサンドは恐怖の対象でしかない。それはなぜか。

それは、そこに「責任」が発生するからだ。何をバターサンドで大げさな、と思うかもしれないが、それが昨今の若者たちの心理的特徴なのだ。そのバターサンドにどんな深刻な責務が発生するのか、いまいちピンとこない人のために簡単に解説しよう。

仮にこのバターサンドが12個入りだったとしよう。そして今、その場にいるゼミ生は8人だったとしようか。

そうすると、1人1つずつ配ったら4個余る。この4個の処置が極めて重大だ。ゼミの先生に渡しても3個余る。これはさらに深刻だ。自分がそんな渦中に巻き込まれることは断じて避けなければならない。よって、「1人1つ配布作戦」は穏便ではない。

穏便こそ命。このバターサンドは、今まで保険に保険をかけて生きてきた人間関係を窮地に追いやるハイリスクアイテムに他ならない。そんな心理が作用した結果が、先の「③固まる」というリアクションに集約される。

「いい子症候群」の若者たちが取る「最適な戦略」

実はこの状況、最も耐え難いのはMさんだ。この「固まる合戦」において、歴戦の「固まる勇者」たちを相手にMさんに勝ち目はない。

そんな社会人Mさんに私からアドバイス。

ここは「あ、じゃあ後で先生に渡しておきますね」というのが正解。一気に空気が氷解する。

逆に「あ、じゃあ君、はい」と言って、たまたま近くにいた学生Nさんに渡すのはできれば避けたほうがいい。Nさんはもちろん受け取るだろう。この時点でバターサンド爆弾はMからNへ引き渡される。

問題は爆弾を引き継いだ学生Nさんだ。彼/彼女はあくまで仮預かりしたに過ぎないという自己暗示のもと、多くの場合はそのまま先生に渡そうとするだろう。ただし、

「先生、Mさんが来て、これを預かりました」

「そうなんだ。でもこっちに持ってきても仕方ないじゃん。皆で食べたらいい」

と返されるのがオチだ。これはまずい。バタサン爆弾爆発の時は近い。場合によっては、やむなくゼミ室の机の上に放置したまま賞味期限を迎えることだって十分あり得る(ちなみに僕はバターサンドが大好きです。念のため)。

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