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「唯一無二の量産型」という矛盾を内包する若者 リスクを負わず自分を差別化したい若者の生存戦略

東洋経済オンライン / 2024年3月17日 14時0分

いい子症候群の若者たちの話をすると、よくこう質問される。

「それって若者だけではなく、日本人全体に言えることでは?」その通りだ。

ただし、過去の若者よりもわかりにくくなっていることがポイントだ。以前の若者の気質は、もっとわかりやすかった。何らかの形で、表面に現れていた。

陰キャ/陽キャの区別はもちろんのこと、趣味や、その他プライベートなライフスタイルまで、なんとなくだが、予想できた。予想ができる分、若手社員たちのマネジメントは楽だった。「彼女はこっちの部署が合いそう」、「彼はこの仕事が合うかも」といった風に。それに、予想が外れたときは、「えー! そうだったの?」と言える空気も(当時は)あった。

それが、今は違う。みんな爽やかで、みんなコミュ力高め。表面的に観測できる水準(レベル)は、明らかに上がっている。良く言えば、人材としての質的向上だ。企業、特に人事部の人たちがこぞって「最近の若者はみんな優秀」という根拠がこれだ。

悪く言えば、量産化が進行している。量産化といっても、いわゆる雑魚キャラではない。

「あなたは他の誰でもない、唯一無二の存在ですよ」、「あなたの経験や体験は、あなただけではなく、この国にとっても貴重なものなのですよ」と、ちゃんと教えられてきた世代だ。

ここが重要なポイントだと思うので、しっかり主張しておきたい。

僕のこれまでの見立てでは、現在の若者の多くは「量産型」であり「唯一無二の存在」だ。矛盾する2つの概念を組み合わせて生きるのは、今の若者のお家芸だ。

周りと同じではいけない、個としての貴重な体験こそが君を唯一無二の存在にする、と教わり続け、事実、就職活動でも「隣の人と君との違いは何か」、「隣の人ではなく君を採用する理由は何か」を問われ続ける。

それでもなお、他人と違う自分に自信が持てない。平均値付近にいることの安心感、安定感は手放せない。

その矛盾を内包するように得たスタイルが「量産型」兼「唯一無二の存在」だ。唯一無二の存在というラベルを貼った量産型と言うべきか。

今の若者は、とても難しい役割を演じているのだ。

金間 大介 :金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授

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