ヒット連発「スターツ出版」読者に寄り添う凄み ケータイ小説から20年、今もファンを作れるワケ
東洋経済オンライン / 2024年3月18日 7時20分
――実際に、10代の人にインタビューすることもやられているんですか?
菊地:もちろんです。たとえば、編集営業担当が、郊外のショッピングモールにある書店さんに行って、そこにいる中高生に、何パターンかの表紙とタイトルを見せて反応を聞いた、ということがありました。1年目と3年目の若手社員のコンビで、気合たっぷりで1日かけて生の声を集めてくれたんです。
その結果、もともとイメージしていた装丁とは、異なる装丁になって発売されました。読者の声を、そのまま本に反映しているんです。
「ブルーライト文芸」はなぜ生まれたか
――現在、ネット上でスターツ出版文庫をはじめとする「青くてエモい表紙」の文芸作品のことが「ブルーライト文芸」と呼ばれているそうです。こうした青い表紙も、中高生の意見を取り入れるうちに自然と作られていったのでしょうか。
菊地:そうですね、偶然です。PDCAサイクルの結果だともいえる。読者に寄り添って、反応を見ながら書籍を作っていくなかで、結果的に中高生にこうしたものが好まれることがわかってきた。最初からそれを狙うのは無理ですね。
タイトルも空や星が付く作品が多いから、必然的にそういう色が多くなっていったのかもしれません。
――なるほど。
菊地:何より、これは人間の本質、つまり「青春」じゃないですか。「赤春」とは言わない。だんだんと自我が芽生えて大人になって、それで中学生ぐらいで恋愛の気持ちが強くなってきて青春時代を迎えるわけです。それは、当然ながら青くなるわけです。
弊社には、「スターツ出版文庫」よりも対象年齢が少し低い「野いちごジュニア文庫」というレーベルもあるのですが、こちらはピンクの表紙なんです。
女の子はピンクや赤が好きで、それでだんだん、少しずつ大人になっていくとそれが青くなってくる。恋愛に、切なさとか複雑な感情が加わってくるのが青、という色なんじゃないかと思います。
――ターゲティングを精緻に行った結果、ある意味で人間の本質がそこに現れているのかもしれないですね。
「モノ」としての書籍の価値を最大限にする
菊地:『すべての恋が終わるとしても ―140字の恋の話―』は、大型の書店に行ったら特設コーナーがあって、この表紙が並んでいます。すると、どこの書店さんもおっしゃるんですが、やはりブルーの表紙が良くて、来店したお客さんがこの前で立ち止まることが多いんですって。思わず手に取ってくれる力を持ってる。
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