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ヒット連発「スターツ出版」読者に寄り添う凄み ケータイ小説から20年、今もファンを作れるワケ

東洋経済オンライン / 2024年3月18日 7時20分

こうした表紙は「エモい」と言われますが、「モノ」として買ったとき、部屋にこの本を飾っておけるわけです。これ、電子書籍だと、同じものを読んでもそんなことは起きない。だからそういう部分でも紙の本の価値を改めて若い人たちが感じてくれている。

――他のインタビューで「読み終わった後に飾ったり、友達に貸したりすることができる本を目指している」とおっしゃっていましたね。版元からすると「新しく買ってほしい」という言葉が出てきそうですが、そのようにおっしゃるのが、すごく顧客に寄り添っている気がしました。

菊地:『恋空』のときがそうでしたから。『恋空』は上巻・下巻の表紙を合わせるとハートになるデザインでした。普通、上巻を買った人は、7割ぐらいしか下巻を買わないといいます。でも、そのときは多くの人がセットで買っていた。2つの表紙をあわせてハートにして部屋に飾るためなんですよ。

さらに『恋空』の場合は、2セットずつ買ってくれる人も多かった。とても感動したのでクラスで回し読みをするんだけど、そうするとボロボロになってしまうので、永久保存版としてもうワンセット、新品を買っていただけたんです。

紙の本をそれだけ愛してくれて、友達にまで紹介してくれる。それが評判になれば、欲しい人は増えるわけで、友達から借りてボロボロになったやつではなく、自分用に新品を買おうとなりますよね。

――長期的な目線で考えることで、結果的には、売り上げの増加にもつながると。

つねに「読者」を見ることが大切だ

菊地:先程、ショッピングモールでリサーチをしたという若手社員の事例をお話ししましたが、その他にも、読者の声に寄り添う工夫はあります。

たとえば、うちは、いくつかの中学校の修学旅行のコースのひとつになっているようで、たまに制服の中学生が社内を見学しに来るんですよ。そこでミーティングをして、いま学校ではやっていることを聞いたりしています。

中学校の『朝読』の時間で、うちの本が多く読まれてるので、東京の憧れの出版社みたいな存在になっているらしい。ネット上では、「スターツ」が「泣ける本」を表す言葉のようにもなっているようです。

――今や、「泣ける本」の代名詞のようになったわけですね、すごい……。でも、こうしたスターツ出版文庫が作ったフォーマットを真似するような会社も出てきているんじゃないですか?

菊地:他の出版社がうちで売れた作家さんに声掛けして出版することもありますが、それだけで売れるわけではありません。二番煎じはうまくいかないものです。

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