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経営者だからこそ感じる「労働組合」の重要性 データ重視で失われた「対話」の共同体を求めて

東洋経済オンライン / 2024年3月18日 10時30分

この点が民主主義を考えるときにとても重要だと思っています。一人ひとり、権利を持っている人間が集まって社会ができているという認識ですよね。でも日本の伝統的な価値観では、まず大人の社会があって、そこに未熟な一人前ではない子どもという存在が加わっていくという建て付けになっている。一人前になるまでは権利も何もないよっていう発想。一人前になって初めてものが言える。そうなっちゃうと、子どもも大人も等しく権利を持っていて、一人ひとりがものを言える民主主義はなかなか根付かない。

「ガチャ化」する貧困

今井:確かに。D×Pでは、子どもの権利とか困窮者の声、虐待状況にある人の声を社会に出していっていますが、さらに働く人、働けない人、しんどい状況のなかでなんとか働いている人の声も拾えるようにしていきたいですね。

青木:とても重要ですよね。困窮している若者が働くって言ったら、すごく劣悪な職場環境とか、労働者を使い捨てみたいに考える会社にしかつながれなかったりする状況があります。もちろんそんなことばかりではないけど、それが「ガチャ化」してしまっています。貧困であったりDVとかネグレクトのある家庭で生まれ育って、なんとか大人になって就職したんだけど、生活費をなんとか稼ぐので精一杯ですと。しかもその職場が劣悪な環境だったら、それは経済的にはなんとかなっているけれど、果たして貧困状態から抜け出せたことになるのだろうか。

こんな感じで、どこまでいっても貧困の状態から抜け出せない状況になっている。本書の題名にもありますが、ある種の階級のようになってしまっていることが問題だと思います。その階級化の延長線上に、もうこの世界をぶっ壊してくれよってトランプ大統領を支持するポピュリズムの社会背景になると思う。そういう家庭環境で育ってしまったけど、大人になったらディセントワーク、尊厳ある仕事につけることが大事ではないかと思っています。

青木:そういうふうに考えると、やはり教育が重要だなと。確かにいい大学に入ると貧困状態から抜け出せるんだけど、学費が払えなかったり塾に行けなかったりして、そもそもいい大学に入ることができない。いい大学に入るためにはまず貧困じゃダメっていう社会は、全然フェアではありません。借金ではない奨学金があって、誰しもが教育を受ける機会が確保されていて、その先に働くこともあって、初めて民主主義的な社会の基盤が出来上がるのではないでしょうか。

新自由主義で生じた分断を結び直す

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