大阪メトロ中央線「20系」は何が特別だったのか 引退直前、検車場での「最後の月検査」に密着
東洋経済オンライン / 2024年3月20日 6時30分
日本には、歴史を変えたといわれる鉄道車両がいくつか存在する。たとえば、日本初の高速鉄道用車両である国鉄0系新幹線電車はその代表格だ。
【写真を見る】大阪メトロ20系の最後の月検査を独占取材。森之宮検車場で新20系や最新鋭400系と並ぶ姿も、もう見ることはない。
世界初の2階建て高速電車である近鉄10000系、日本初の前面展望車両である名鉄7000系などもそれにあたるだろう。
通勤用車両だが画期的
これらはいずれも特筆すべきサービス設備(スピードもサービスの一環といえる)を備えた各社のフラッグシップ車両だが、一方で技術面において大きな足跡を残したものももちろん存在する。「新性能電車」のはしりとされる国鉄101系や、日本初のオールステンレス製車両である東急7000系などは、通勤用という地味な役割ながら、日本の鉄道史を語るうえで欠かせない。
そして、この2024年3月引退の大阪市高速電気軌道(Osaka Metro、以下「大阪メトロ」)の20系電車もその1つだ。
20系は大阪メトロの前身である大阪市交通局が開発し、1984年に第1編成が登場した。その最大の特徴は、制御装置にVVVFインバータ式を採用した点。今ではほぼ全ての電車がVVVFインバータ制御を採用しているが、当時はまだ技術開発の途上であり、鉄道車両で正式採用されていたのは熊本市交通局の路面電車だけだった。つまり、20系はいわゆる普通鉄道で日本初のVVVFインバータ制御車両ということになる。
こうした流れから、この第1編成は試作車としての意味合いも含んでおり、第2編成以降とは決定的な違いがあった。というのも、第1編成は3両の電動車がそれぞれ異なるメーカーの制御装置を搭載していたのだ。もともと大阪市交通局は公営企業という性質上、同一形式内であってもいくつかの車両メーカーや機器メーカーが製造を手掛けることが多かったが、1つの編成内でメーカーが混在するというのは異例である。
「日本初」ならではの苦労も
「3社とも基本的な性能は同一ですが、スイッチングのタイミングなどが微妙に異なるため、その調整に苦労しました。また、日本初ということで細かい不具合もいろいろ発生し、しばらくその対応に追われました」と、森之宮検車場の谷口竹雄さんは語る。今年で60歳を迎える谷口さんは、入局2年目に新車である第1編成の制御器整備を担当。以来40年間にわたり、20系の面倒を見てきた。
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