WR-Vの価格をライバルに合わせたホンダの苦境 高価格化したヴェゼルの穴を埋めるも課題あり
東洋経済オンライン / 2024年3月24日 12時30分
最近は各メーカーから「選択と集中」という言葉が聞かれ、メカニズムやグレードの種類を減らす傾向が見られる。
販売台数が伸び悩む状況でコスト低減まで迫られると、「選択と集中」で効率を高める必要も生じるが、「選択」の対象を誤るとユーザーニーズからはずれて売れ行きも下げる。今のホンダにはこのミスが多く、「オデッセイ」「CR-V」「シビック」などは、廃止したあとに復活させている。
WR-Vは価格を重視するユーザーをターゲットとしたため、各グレードの内容を見ると、装備と価格のバランスに特徴がある。一般的には中級グレードを割安にすることが多いが、WR-VはベーシックなXがお買い得だ。
Xにもホンダセンシング、サイド&カーテンエアバッグ、フルオートエアコンなどが標準装着され、中級のZに比べて18万円相当の装備を省いただけだが、価格は25万800円も安い。
Xは価格を200万円台に抑えて割安度を強調するため、209万8800円としたから、装備の割に安価になった。この価格はヴェゼルGの239万9100円と比べて約30万円安く、ヤリスクロス・ガソリンGの215万円と比較しても約5万円、下まわる。
ただし、ヤリスクロスGにはアルミホイールやディスプレイオーディオが備わる代わりに、WR-Vに標準装着されるLEDヘッドランプはオプションだ。
また、室内空間もWR-Vのほうがやや有利で、身長170cmの大人4名が乗車したときの足元空間は、WR-Vでは握りコブシ2つ半の余裕があるが、ヤリスクロスは1つ半にとどまる。後席を使っているときの荷室容量も、WR-Vの458Lに対し、ヤリスクロスは390Lと少ない。
WR-Vは、アダプティブクルーズコントロールの機能や燃費に設計の古さが散見されるものの、価格はヤリスクロスと同程度に割安で、居住空間や荷室の広さはヴェゼルと同等。ヴェゼルはガソリン車グレードを減らしてユーザーをヤリスクロスに奪われたから、WR-Vの投入で取り返そう。それがホンダの意図だ。
そのためにWR-Vは、価格をヤリスクロスに合わせた。実用的なコンパクトSUVが欲しいユーザーにとって、WR-Vはお買い得で検討する余地の高い車種に仕上がっている。きっとWR-Vは、それなりの台数を売る人気車種になるだろう。
ブランドのダウンサイジングを食い止めよ
一方で、ホンダにとって今後の課題は、安価で実用的なWR-Vの投入によりヴェゼルの売れ行きがさらに下がるであろうことである。
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