「医学部を目指した20年」夢を諦めた彼女の行く末 医師になりたかった理由、新たな道を選んだ訳
東洋経済オンライン / 2024年3月24日 7時0分
とはいえ、もう一度医学部医学科を目指すことに決めたtotoronさん。その理由は教授から背中を押してもらったことにありました。
「実は在学中も毎年センター試験を受けていましたが、ダメでした。3年生のときに、4年の研究室配属前に、教授に『数学で頑張っていく気があるなら、研究のサポートをします』と言っていただきました。
しかし、心のどこかでいつも医学部医学科受験のことがあったので、正直にこれまでのことを伝えたら『それは頑張ったほうがいいよ』と背中を押してくださいました。結局、大学を卒業してからもずっとセンター試験を受けて、医学部医学科を目指すようになりました」
奈良女子大学に入る前の浪人時代と合わせて、センター試験を受け続けた結果、最高パーセンテージは75%だったようですが、医学部医学科には届かず、受験を続けました。
しかし、2021年の第1回共通テストを最後に、ついに挑戦し続けた20年に終止符を打ちます。
「とにかく医学部医学科を諦めたくなくて、塾や家庭教師のバイトをしながら、一般入試と学士編入学試験を並行して受験しました。頑張り続けましたが、やっぱり受からなくて。最後の年の共通テストも67%に終わって、疲れてしまいました。
そのタイミングで、ネットで見つけた学費がなんとかなりそうな私立歯学部に特待で合格し、3年生まで通いました。
しかし、それでもまだ医学部医学科への思いが断ち切れない自分もいて、歯科医師になるために頑張ることができなくなってしまいました。
歯学部に入り、大学に行く人の恵まれすぎた環境を改めて目にしたことで、自分自身があんなにひどい状況からよく頑張ってきたなと思えるようになり、なんだかもういいやと思えるようになりました。
こんな気持ちで、このまま頑張ることはできないと感じたので、2024年2月をもって退学することに決めました。これから新しい人生をスタートします」
医師を目指した人生に未練はない
医学部医学科を目指して、20回にも及ぶセンター試験と共通テストの受験を経験したtotoronさん。
彼女に浪人してよかったことを聞くと、「多様な経験ができたこと」、頑張れた理由については「夢があったから」と答えてくれました。
歯学部を退学して、3月からは学習塾の専任講師として勤務することが決まったtotoronさん。医師になる夢こそ破れましたが、悲壮感はまったくありません。
浪人生活を通して変わったことについても聞いてみると、「積極的になれた」ことが大きいと言います。
「私は小さいころ、どこに行くにもお母さんの後ろについていくような子でした。自分から何も聞くことができなくて、母親に頼ってばかりでしたが、浪人生活を通して、自分の意思で行動するようになれたと思います。
私は医学部医学科には入れませんでしたが、自分が教えていた生徒は、基礎学力を徹底してつけてあげることで医学部医学科に入れた子もいます。
医学部医学科に入るために必要な要素を何もわからない中で、もがいて勉強をしてきた自分だからこそ、教えられることがあると思うので、これから、教育の仕事に就いて彼らを支えていきたいと考えています。
もし、医学部医学科で行きたいと思う大学がある子がいるなら、その志望校を諦めなくていいように、寄り添う気持ちを持ちつつ、どうしたらその子が志望校を突破できるようになるか、ノウハウを伝えたり弱点を潰したりしながら一緒に考えていきたいと思います」
自分なりに目標に向かい、やり抜くことができたからこそ、彼女の表情は晴れ晴れとしているのだと思えました。
totoronさんの浪人生活の教訓:夢に向かって納得いくまで頑張れば、後悔することはない
濱井 正吾:教育系ライター
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