ひたちなか海浜鉄道、社長が明かす延伸計画の姿 乗客は何人増える?新駅から公園への移動は?
東洋経済オンライン / 2024年3月26日 6時30分
さらに総工費の負担については「工事の施工認可がまだなので現段階で公表できるものではない」としながらも、「あくまでもひたちなか市と当社の希望として、昨年10月からの法改正により、鉄道にも適用されることになった”社会資本整備総合交付金”の活用を想定している」とのことだった。これが適用されれば、国の補助率が50%となるため、その残額をひたちなか市と事業者、県で負担していくことになる。また、「負担割合については、今後協議を行い、決定していく。また、社会資本整備総合交付金の活用も想定している」とした。
この社会資本整備総合交付金とは、地域・都市の防災対策のほか、交通バリアフリーにも利用できる、国の補助金制度だ。鉄道は、外からも様々な人が利用する。こういった補助金や支援などを多く利用して、公共交通を支えるということはとても大事な方法である。
運行にあたっては輸送力増強用も考えており、車両も12両に増備(現有・8両、4両増備)、人材についても若干数の増員も想定しているという(現在30人、数名の要員増)。
また、新駅とひたち海浜公園の南口ゲートとが現行計画では400mほど離れており、来場者は駅から5分程度歩く必要がある。これについては「今後、公園側と協議し、直近ルートの開放なども検討していく」と語る。
さらに地域としての輸送体系の充実には「鉄道の輸送力だけでは需要に応じきれない。周辺のバス事業者との協力や連携も必須」として、「共通乗車券の設定や協調ダイヤ(連携ダイヤ)の調整は、絶対条件だと考える」。
定住人口の増加につなげる
これからのひたちなか海浜鉄道については、「今までもそうだったが、まちづくりや地域全体の活性化を視野に入れての運営をしていく。また、延伸によってお越しいただく来園者にひたちなか市や茨城県の魅力を感じていただき、リピーターとなっていただく。おさかな市場やアクアワールド・大洗、ほしいも農家さんなどとも連絡を密にして、沿線全体を盛り上げていく。また、通勤輸送手段の確保により、定住人口の増加なども考えていく」と話した。
さらに「ローカル鉄道活性化の最先端事例として、これまでの取り組みを対外的にアピールし、日本全国の地域交通の活性化に繋げるお手伝いをしたい。本年度は当社が設立した一般社団法人のローカル鉄道・地域づくり大学が、国土交通省の地域交通共創モデル実証プロジェクト事業を受託し、行政向けにレクチャーを予定している」という。
全国各地でローカル線が廃止され、街に人が減ってきたという話を、毎日のように聞かされる。そんな中、ひたちなか海浜鉄道は、地域と一体となって輸送を活性化させ、延伸の計画を進行している。昨年末から話題になっている千葉県でのダイヤ改正問題と比較するのはおかしいかもしれないが、沿線の利用者や住民、その周りにいる人たちのために、公共交通は存在している。
全国の交通事業者にとっても、ひたちなか海浜鉄道の事例は、とても大きい。全国の鉄道存続に悩む地域には、ぜひとも参考にしていただきたいと思う。
渡部 史絵:鉄道ジャーナリスト
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