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部下を抱え込んで離さない上司の遅すぎる後悔 春の人事異動「優秀な社員」に待ち受ける不運

東洋経済オンライン / 2024年3月27日 12時0分

部長はゴネにゴネた。

一度では折り合いがつかず、日を改めて打診しても、首を縦に振らなかった。そこで私も腹に据えかね、極め付きの一言を言い放ってしまった。

「B部長、私も腹を割って話します。そこまでAさんを離したくないと言うのなら、部長はAさんの今後のキャリアに責任を持てるんですか?」

Bさんは一瞬、言葉に詰まった様子を見せた。だが、「どうしても承服しかねる」と、最後まで譲らなかった。

理由は薄々わかっている。部長である自分に立てつくことなく、期待以上の成果を出し続けるAさんを絶対に手放したくなかったのだ。もしAさんが異動して部の業績が落ちたら、自身の評価が下がり、出世はおろか、立場も危うくなる。それが怖かったからだ。

そして課長Aさんの異動はかなわず、そのまま今の部署でステイ。本人のあずかり知らぬところで、彼の“運命”が決まってしまっていた。

「自分のエゴで部下を縛りつけてしまった」

会社の人事とは、自身の範疇を超えたところで決められてしまうケースがほとんどだ。そして、諸行無常の理のごとく、はかなくも移り変わるものでもある。部下を自分の手元に縛りつけても、瞬く間に自分が他部署に異動になることもある。

先ほどの部長Bさんも一年半後に、あっけなく他部署に異動になった。その直後にBさんから私宛にメールが来たときは一瞬、身構えてしまったが、そこにはこんな思いがつづられていた。

「あのとき、萬屋さんに言われた最後の一言が、今ようやく身に染みてわかりました。私は自分のエゴでAさんを縛りつけてしまった。未来ある彼のキャリアこそ、考えてあげるべきでした」

そう言ってくれて少々嬉しかった反面、正直「そのときに気づいて承諾してほしかったよ……」と、苦い思いもわき上がった。何も知らないAさんはその後も変わらず、現部署で懸命に働いているようだった。

管理職こそ部下の将来も見据えてほしい

管理職の中には、目の前のことや、自分の身の回り半径3メートルぐらいしか見えていない(見ようとしない)人もいる。

B部長のように、優秀な部下を自分の部署に囲い込み、絶対に離そうとしない人。

他部署の優秀な社員をなんとしてでも自分の部署に引き入れようと躍起になる人。

やる気も成果も上がらない問題社員や、ミスも文句も多いモンスター社員を自部署から追い出そうと画策する人。

こうしたアクと押しの強い部長が多かったため、異動計画の交渉は難航した。人事担当はそのたびに手を替え、品を替え、再提案を重ねる。

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