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「水素の町」を構想する福島・浪江町の理想と現実 震災復興の住民は割高コストを受け入れるのか

東洋経済オンライン / 2024年4月4日 8時0分

そんな復興道半ばの町で、いま急速に進んでいるのが「水素タウン構想」だ。

県内3カ所目となる水素ステーションが浪江町に開業したのは2022年12月のこと。地元の重機リース会社、伊達重機が「水素で町を盛り上げたい」と国や県、町の補助金を活用して約5億円を投じて建設した(補助金は4億円)。

水素ガスは町内の実証施設「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R)から調達し、毎月2~3回、ステーション内のタンクに充填される。実証段階ということもあり、月額数十万円の仕入れ費用は「これから1年分まとめて請求される」(担当者)という。

販売価格は1650円/kg。トヨタ自動車のFCV「ミライ」をゼロから満タンにすると9240円になる(航続距離850km=充填水素5.6kgの場合)。水素ステーションは伊達重機でレンタカーとして貸し出すミライ50台のほか、一般の利用も月に50台ほどあるという。

水素ステーションのはす向かいの自宅でカフェを営むのが畠山浩美さん。畠山さんが避難先の茨城県から浪江町に戻ったのは5年前のことだ。帰還した住民の憩いの場になればと「hana cafe」を開業した。

日立が進める水素供給の実証に町民が参加

畠山さんは2023年9月から、日立製作所などが進める一般家庭への水素供給の実証に参加している。毎週金曜日には、業者が小型水素ボンベの充填にやって来る。12本のボンベを装填した燃料電池装置で水素と空気中の酸素を反応させて電気を起こし、家やカフェの電力の一部を賄っている。

「電力は750ワットで、コーヒーメーカーでお湯を沸かすくらい。電気代も変わらない」と畠山さんは言う。それでもhana cafeでは「水素で沸かしたコーヒーが飲める」と町内で評判になっている。

「水素と言えば原発建屋の水素爆発が真っ先に思い浮かぶ」(別の町民)と言うように、浪江町の町民にとって、「水素は怖いもの」だった。だが、畠山さんの水素に対するイメージは確実に変化している。

「水素ステーションのものものしい工事が始まり、最初は水素なんて大丈夫かなと抵抗感もあった。でも、水素自体は安全で環境にやさしいエネルギーだと知って自分も何か貢献できればと思うようになった」(畠山さん)

水電解や水素の輸送、燃料電池などに割高なコストがかかることも学んだ。「電気代が1割程度上がっても、水素を使っているなら許容できる。水素の良い面が発信されて、浪江町から利用が広がっていけばいいと思う」と畠山さんは言う。

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